MVVが必要になるタイミング
筆者は、スタートアップがMVVをつくる・明文化するタイミングは、PMF(Product Market Fit)した後でよいと考えている。その理由はX(旧Twitter)などで多くの人が語っているが[1][2]、筆者もPMF後に採用が加速するタイミングや、組織が「取締役とメンバー」だけの2段階構造の文鎮型から「取締役とマネージャーとメンバー」の3段階構造のピラミッド型に移行していく20~50名規模のタイミングがよいと考えている。
注
[1]: https://twitter.com/TadokoroMasa/status/1155492696426872835
[2]: https://twitter.com/sogitani_baigie/status/1254567878646325248
採用が加速するタイミングでは、複数人の面接官がミッション・ビジョンを採用候補者に伝えることことが、自社の魅力付けのために重要になる。バリューもカルチャーフィットなどの採用基準で採用候補者を見極めるために役に立つ。
また、組織が拡大してマネージャーなどの中間管理職を配置するようになると、経営陣とメンバーが直接コミュニケーションをとる機会が少なくなるため、全社で目指す方向をすり合わる**という意味でもMVVの明文化はやはり重要度が増す。
では、MVVが必要なフェーズに入ったスタートアップは、どのようにそれを策定していけばよいのだろうか。ここからそれを7つのTipsで紹介する。
Tips1. プロジェクト体制はピザ2枚ルールで
大前提として、MVVのつくり方やプロジェクト体制に正解はない。CEOが1人で1週間山に籠もって考え抜いてもよいし、全社員で合宿を行ってワークショップ形式でつくっても構わない。たとえば、全社員のおよそ4分の1である延べ1022名が9ヵ月にわたってワークショップを行い、企業理念をつくった協和発酵キリンの事例もある。
とはいえ、人数が多すぎると手間やコストが膨大になるし、人数が少なすぎると策定後の組織への浸透が難しくなる。筆者のおすすめは、CEOを含めた取締役や執行役員3~6名+人事や経営企画などのプロジェクト推進担当1~2名の計4~8名によるプロジェクト体制だ。CEO以外の経営幹部が加わることで策定後の組織への浸透が進めやすく、8名までであれば議論が発散しすぎて収束できないというリスクを最小化できる。チームの人数に悩んだら、Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が提唱するピザ2枚ルール(チーム編成はピザ2枚を配りきれる程度の人数)が参考になる。