脱JTC! 経営に貢献するHRモダナイゼーション
こんな課題はありませんか?
- 経営戦略と戦略実行体制(組織構造)が整合していない
- グループ会社各社の独立性が強すぎて、本社からの統制が効かない、かつ各社の組織・人材の状況が見えない
- ビジネス側から人が足りないという課題が挙がっているが、経営視点で補充要否の判断がつかない
歴史ある日本企業が“JTC”と呼ばれることがあります。JTCとはJapanese Traditional Company(日本の伝統的な会社)の略語で、旧態依然とした企業文化や人事制度を持つ会社を揶揄して使われているようです。
ここ数十年、さまざまな外部環境の変化に対応しながら維持・成長するために、ビジネスモデルやコーポレート機能を変革してきた日本企業ですが、組織・人事管理の領域では「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれたころの仕組みと文化・意識が根強く残っています。組織・人事の取り組みは投資対効果が見えづらいことや、会計領域におけるIFRS(国際会計基準)対応のようなグローバルスタンダードを強く意識させる機会がなかったこともあり、組織・人事管理の変革が優先度の高い経営アジェンダにならなかったという背景があります。
昨今、「人的資本経営」が注目されるようになり、自社の伝統的な部分を見直して経営に貢献するための組織・人事の仕組みをつくる「HRモダナイゼーション」が経営レベルで議論されるようになってきました。人事部門にとっては絶好の変革機会ではありますが、多くの日本企業では、「日本や自社の組織・人事管理は特殊であるから欧米はじめ他国の考え方はまったく合わない」として独自の進化を続けてきたため、モダナイズした姿はどのような状態なのか、どのように変革を進めるのかが見えておらず、取り組みは手探りの状態です。
ということで今回は、HRモダナイゼーションの要素の1つであるグローバル先進企業の組織管理(組織構造管理)の考え方と、それを日本企業に取り入れる際のポイントを紹介します。
グローバル先進企業の組織管理とは
組織管理(組織構造管理)とは、簡単に説明すると、各組織の定義や関係性をポジションとレポートラインで管理することです。人事給与システムの組織マスター管理のような、組織管理の名称を一覧管理するだけという意味ではありません。
ポジションとは、組織構造を構成する単位です。ポジションは職務、等級、勤務地などの人材要件・働き方の属性情報をひも付けて管理するのが一般的であり、組織内の人員の役割単位で定義されることが多いです。部、課のようないっしょに働くグループを単位とした組織を「箱・部屋」にたとえると、ポジションは「(部屋の中の)椅子」のようにたとえることがあり、椅子管理といわれることもあります。
そして、各ポジション間の指揮系統を表現するのがレポートラインです。上司・部下の関係性のことをレポートラインと呼ぶことが多いのですが、組織管理の観点では、ポジションの関係性をレポートラインとして定義することが、上司・部下の関係性を決める前提となります。つまり、ポジションに人が就くことで、その人の上司(または部下)が誰であるか決まります。
このポジションおよびレポートラインを管理することで、各ポジションに就いている人がどのような役割、権限・責任を持ち、どの指揮系統に属しているかを知ることができます。
グローバル先進企業はポジションとレポートラインで、海外現地法人を含めたグループの組織管理をしています。これが標準的な組織管理です。これを経営視点で見た場合、経営戦略に連動した機動的な組織転換とビジネスプランと整合したヘッドカウント管理ができるというメリットがあります。次はこれらについて説明します。