4.訴訟になる前に取っておくべきだった対応(予防策)
(1)オープン前の労働時間管理について
Yジム代表者は、予約表の記載を通じて、Xが午前8時45分より前の時刻に顧客に対するトレーニング指導を行うことを把握していました。
しかしながら、当該時間を労働時間として取り扱わず、割増賃金を支払っていなかった点が問題となりました。
このため、オープン前のトレーニング指導を認めるのであれば、あらかじめ早出の申請・承認手続を整備したうえで、実績に応じて早出分の割増賃金を支給すべきでした。
一方で、オープン前のトレーニング指導を認めず、早出残業も原則として不可とするのであれば、その方針を明確に定め、本人に周知徹底する必要がありました。
こうした点を徹底していれば、早出分の割増賃金をめぐり、訴訟の提起には至らなかったかもしれません。
(2)休日振替の事前申請の徹底
休日振替は、事前指定と特定(振替元・振替先の明示)がポイントになります。今回は、「公休」表記に依存していたことが問題でした。
そうではなく、シフト表に振替元(労働日)・振替先(休日)、通知日、承認者等を明確に記載しておき、後出しの振替、いわゆる代休とみなされないような運用を徹底する必要がありました。
なお、休日振替には、前記の行政通達以外に、次の行政通達があります。参考にしてください。
<休日の振替により1週間の法定労働時間を超える場合は、その超えた時間が時間外労働となること(労働基準法第35条関係)>
就業規則に定める休日の振替規定により休日を振り替える場合、当該休日は労働日となるので休日労働とはならないが、振り替えたことにより当該週の労働時間が1週間の法定労働時間を超えるときは、その超えた時間については時間外労働となり、時間外労働に関する三六協定及び割増賃金の支払が必要であることに注意されたい。
(昭和22年11月27日 基発401号)(昭和63年3月14日 基発150号)
<休日の振替を行う際の留意点(労働基準法第35条関係)>
業務等の都合によりあらかじめ休日と定められた日を労働日とし、その代わりに他の労働日を休日とするいわゆる休日の振替を行う場合には、就業規則等においてできる限り、休日振替の具体的事由と振り替えるべき日を規定することが望ましいこと。
なお、振り替えるべき日については、振り替られた日以降できる限り近接している日が望ましいこと。
(昭和23年7月5日 基発968号)(昭和63年3月14日 基発150号)

