約5000名分のデータ「過去45年分、約1万2000組織」を紐付けた方法とは
事業と人事をつなぐタレントマネジメントのプラットフォームは構築できた。目指すのは、タレントマネジメントデータを活用したより効果的な異動配置やサクセッション、人事考課だ。
しかし、「タレントマネジメントデータを体系的に分類しただけでは、タレントマネジメントの実現は難しい」と小林氏は述べる。過去に蓄積された膨大な人事データを整理してプラットフォームに取り込む必要があるからだ。
大阪ガスでは、過去40年分のアセスメント結果や数年分の面談記録といったデータは大量に保有していたものの、システム上に点在しており、そのままではプラットフォーム上で活用しづらい状況にあったという。小林氏は、「点在している膨大なデータと今回分類した経験領域との紐付けが、もっとも泥臭い作業だった」と振り返る。
「関係会社などへの出向者を含む、大阪ガスの全社員約5000人がこれまでに所属した過去45年分、約1万2000チームを18の経験領域に分類する作業が必要でした。手作業では限界があるため、関係会社であるさくら情報システムのAI技術を活用しました」(小林氏)
AIに、最新の組織情報と経験領域の紐付けデータを学習させ、過去の組織名がどの領域に該当するかの第1案を出力させた。これをもとに、人間が目視で確認・修正しながら、全社員の経歴を大分類から小分類までの経験領域に紐付ける作業を完遂。
これにより、全社員1人ひとりがどの領域で何年の経験を持っているかを可視化することに成功したのである。
サクセッションプランは生成AIを使ってさらに高度化
ここからは、整備したタレントマネジメントデータの活用方法を見ていこう。よく使う場面として、小林氏は「サクセッションプランの見える化」を挙げた。
「たとえば、『この経験領域を〇年経験した人』といった条件の一覧表をすぐに抽出できるようになりました。縦軸に年次、横軸に職責等級をとった一覧表を作成することで、人材の層の厚さや偏りが一目で把握できます」(小林氏)
この一覧表は経営層や関係者とのディスカッション材料として活用されているという。特定の領域で部長クラスや課長クラスの層が不足していることが可視化されれば、他領域からの異動や若手の抜擢などの対策を早期に検討できる。
さらに、主要ポストのサクセッションプラン策定においては、生成AIを導入してプロセスを高度化している。たとえば人事部長の後任候補を選定する際、タレントマネジメントデータ体系、職責権限規程などの社内文書を生成AIに読み込ませ、「人事部長に求められる要件」と「後任候補に求められる経験や知見」を出力させる。
人間は、生成AIが出力した「『計画』『人事施策・制度』『人事管理』などの経験が必要である」といった要件の素案を精査したうえで、タレントマネジメントシステムを用いて該当する経験や職責等級を持つ社員を検索し、候補者をリストアップする仕組みだ。
「AIのアウトプットを鵜呑みにするのではなく、それをベースに議論を深めることで、主要ポストの3代先までの候補者を記載したサクセッションプランを策定し、配置や育成に活用できるようになりました」(小林氏)

