人材ミスマッチはなぜ生じるのか——視点・仕組み・運用にまたがる構造的要因
こうした人材ミスマッチは、個々の人事施策の是非だけで生じているわけではありません。多くの企業で共通して見られるのは、「視点」「仕組み」「運用」という3つのレイヤーが、事業変化のスピードに対して十分に連動していないという構造的な課題です。
視点:事業の変化に対し、職務の定義が追いついていない
第1に「視点」の問題です。
多くの企業では、事業ポートフォリオが今後どのように変化していくのか、その結果としてどのような職務や組織能力が新たに求められるのかについて、十分な検討や定義が行われないまま、人材マネジメントが運用されています。
事業そのものは市場環境に応じて変化しているにもかかわらず、職務の内容や役割定義が過去の延長線上にとどまっている。その結果、変化していく事業と、変わらない職務との間にギャップが生じ、その職務に就く従業員においてもミスマッチが発生します。
これは個人の能力不足というよりも、「どのような役割を果たすことが期待されているのか」が、将来視点で再定義されていないことに起因する問題だといえるでしょう。
仕組み:ギャップと選択肢を認識できない制度設計
第2に「仕組み」の問題です。
多くの企業では、従業員が「現在就いている職務に対して何が不足しているのか」「外部の労働市場と比較したときに、どの程度の市場価値ギャップがあるのか」といった点を、客観的に把握できる仕組みや処遇設計になっていません。
そのため、本人にとっては「何が課題で、次に何を目指せばよいのか」が見えにくい状態が生じます。仮に何らかの気づきがあったとしても、社内の異動や配置転換が属人的に判断される運用である場合、それが具体的な選択肢として提示されないケースも少なくありません。
結果として、ミスマッチの状態にある人材が、気づきや行動のきっかけを持てないまま固定化されていくという状況が生まれます。
運用:人材活用が偏り、成長の機会が分散されない
第3に「運用」の問題です。
事業目標の達成は、往々にして一部の優秀な人材によって支えられています。その結果、成果が出ている現場では、人材配置や役割分担に対する問題意識が顕在化しにくくなります。
一方で、現在の職務と必ずしも適合していない人材については、明確な課題として認識されないまま、成長や挑戦の機会が十分に提供されない状態が続くことがあります。優秀な人材には業務負荷が集中し、やがて外部への転身を選択するケースも生じます。その穴を外部採用で補う一方、内部に残る人材のミスマッチは解消されないまま蓄積されていきます。
このように、運用の結果として人材活用が偏在し、ミスマッチがさらに促進される構造が生まれているのです。

