オラクルには何ができるだろうかと考えた
「人が足りない」と言われ続けて久しい。独立行政法人 情報処理推進機構『IT人材白書 2015』によると、IT人材の「量に対する過不足感」では「不足している」は2010年の48.9%から増加の一途で2014年には87.4%に達した。「質に対する過不足感」は2010年から2014年まで85%~90%の間で高止まりしている。傾向としては微増の方向だ。
量においても質においても圧倒的な不足感がある。日本オラクル 取締役 代表執行役社長 兼 CEO 杉原博茂氏は「昨今ではセキュリティ、ビッグデータ、IoTなどお題目は並びますが、圧倒的に人が足りません」と述べる。
高度な人材が数多く求められているのは確かだ。少なくとも「求める側」の感覚として。この問題はとても根深い。採用が即戦力ばかり重視しているのではないか。人事制度が高度な人材に対して定着しにくいものになっていないか。仕事が人海戦術のように数にたよる形となっていないか。問題は人材の量と質だけなのか。そんな疑問も浮かぶ。
そうした疑問はさておき、量も質も充実させるには教育を施さなくては始まらない。自主的な自己啓発に頼るだけでは人材不足は解決しないだろう。
また人材育成はIT業界だけに限らず、日本の重要な課題となる。少子高齢化が進み、生産人口は減少の一途。市場は縮小し、生産人口も減るばかり。さらに日本はOECD主要先進7か国中、労働生産性は最下位である。「働き過ぎ」とも言われているが、生産性が悪いということは時間の浪費も少なからずあるということだ。これは「先に帰るのは気が引ける」など意識の問題もある。
「(こうした状況に対して)オラクルは何ができるだろうかと考えました」と杉原氏は言う。その答えの1つが教育制度の充実だ。今回は「Oracle Academy刷新」として対象範囲を拡大し、人材育成活動に力を入れる。
中学の「技術・家庭科」向けカリキュラムとしての提供も視野に
あらためて「Oracle Academy」について確認しておこう。オラクルは「将来の技術者、イノベーター、およびリーダー開発に向けたIT人材育成への投資」であり、「高度IT技術者教育計画を支援する、包括的で無償の慈善プログラム」と定義している。
日本ではプログラム参加校は13年間で250校以上。年間3万人の学生が参加し、累計では20万人を超える。Oracle MasterやJava認定資格の取得にまで到達した学生は累計で2万人以上(一般の資格取得者の累計は25万人)。
Oracle Academyは「Oracle University」と比較すると分かりやすいだろう。Oracle Universityも教育プログラムではあるが、対象は主に現役の技術者を想定している。社会人が業務や自己啓発の一環で学ぶときのプログラムだ。Oracle Universityが開発・蓄積してきた教育コースは、Oracle Academyにも提供されている。イメージとしてはOracle Universityがメインとなる大学で、Oracle Academyは大学付属の中学や高校と考えてもいいかもしれない。
これまで、Oracle Academyは大学や専門学校向けのプログラムだった。学生も学校も就業前にスキルを身につけ、就職活動で有利とすることを目的としたところが多い。つまり即戦力育成という意味合いが強かった[1]。
今回の刷新では対象を中学や高校にも広げる。この年代だと、まだ即戦力の段階にはない。「ITやプログラミングとは何か」を知る契機となりそうだ。
現在、中学では「技術・家庭科」の中で情報やコンピュータについて学ぶ時間が設けられており、高校では「情報」という必修科目がある。すでにカリキュラムとしては用意されている。Oracle Academyはこの科目向けのカリキュラム提供を考えている。
例えば、中学向けには3Dアニメーションを作成するコース「Getting Started with Java Using Alice」(推奨8時間)がある。プログラミングの初歩を体験的に学ぶことを目的としている。まずはどのような要素があり、どのような手続きをするかといった概要をつかむ。高校向けには2DゲームをJava言語で開発するコース「Creating Java Programs with Greenfoot」(推奨16時間)がある。実際のプログラミングを体験するのが目的となる。デモを見る限りでは海外の大学が作成したもののようだ。さらに高度なアカデミックなプログラムもある。
注
[1]: 例外として「Java for Kids/Students」など小中学生向けのプログラミング体験イベントもあった。