はじめまして。株式会社アドックインターナショナルで通信インフラ向けシステムインテグレーションに携わっています川畠と申します。
数年前から「クラウド」という言葉をよく耳にするようになりました。皆さんの中にも、アマゾンやマイクロソフトなどのプロバイダーが提供するクラウドを利用してアプリケーション開発などをされている方がいらっしゃると思います。クラウドを使うには、これらのプロバイダーから借りるしか方法はないのでしょうか。実は、皆さんが想像するより簡単にクラウドを構築できるかもしれません。
そこで本稿では、クラウドを構築するためのソフトウェア群「OpenStack」と、OpenStackに関する知識やスキルを認定する資格の1つ「OPCEL認定試験」を紹介します。
OpenStackとは
OpenStackとは、オープンソースで開発されたクラウド構築用ソフトウェア群の総称です。OpenStackのコンポーネント(機能)を組み合わせることで、簡単な構成であれば1台の物理サーバー上に、仮想的なサーバーを複数とネットワーク、ストレージなどを構築できます。その他にも、ビックデータ分析で用いられるHadoop機能や、運用状況に併せてサーバーやネットワークを自動的にすばやく拡張/縮小する機能などのコンポーネントも用意されています。
オープンソースで簡単にクラウドを構築できると聞いて、胡散臭く感じていませんか? OpenStackはあの米NASAと、米国で著名なホスティング事業者の1つであるRackspace Hosting社が共同プロジェクトとして開発を始めたソフトウェアです。そう聞くと少しは信頼感があるように思えてきませんか?
さて、Openstackの全体像をつかむためには、各コンポーネントの機能を理解する必要があります。主なコンポーネントとその機能をいくつか挙げてみましょう。
Nova | 仮想的なサーバーを立てる |
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Swift | ファイルを保存、管理する |
Glance | 仮想的なサーバーへOSのイメージを提供する |
Neutron | ルーターやスイッチ、ファイアウォール、ロードバランサーなどで構成されるネットワークを仮想的に作る |
Cinder | 仮想的なサーバー用の仮想的なストレージ機能を提供する |
Heat | サーバーの拡張/縮小を行う |
Sahala | Hadoopによる分散処理システムを構築する |
OpenStackは、上記以外にも様々なコンポーネントを持っていますが、それらをうまく組み合わせることで使いたい機能を備えたクラウドを構築できます。
日本で受験できる主なOpenStackの資格
OpenStackにはすでにその知識やスキルを認定する資格がいくつも提供されています。ただし、現在、日本で受験できるものは限られています。「OpenStack 資格」をキーワードにGoogleで検索してみると、次の2つの資格が上位に何件も表示されました(本稿執筆時点)。
RHCSA(Red Hat認定システム管理者)
有力Linuxディストリビューションベンダーのレッドハットが提供している資格。そのうち、OpenStackを対象とする資格として「RHCSA ―Red Hat OpenStack―」があります。この資格は、OpenStackで簡単なプライベートクラウド環境を構築し管理できる知識やスキルを持っていることを、実技試験で証明します。
私は「OpenStackで概ね構築済みのクラウドサービス環境に対し、ユーザーの追加・削除や、仮想的なサーバーとネットワークの構築・管理に主眼が置かれた資格」とイメージしています。OpenStack環境を持つ企業の情報システム担当や、担当になることが予想される方にお勧めです。
OPCEL(OpenStack認定技術者試験)
LPI-Japanが提供している資格。OpenStackを使ってクラウドサービス環境を構築するために必要な知識を備えているかどうかに主眼が置かれています。私は「プライベートクラウドだけでなく、パブリッククラウドを提供するのにも必要なOpenStack全般の知識を習得できる資格」とイメージしています。現在、サーバーやネットワークの構築に携わっており、今後仮想化技術の導入を担当することになりそうな方にお勧めです。
なお、OPCELを取得するにはLinuxの基礎知識が前提となります。LPIC レベル2程度の知識があれば、スムーズに取得に向けた学習を進められると思います。
上記2つの資格のうち、私はOPCELを取得しました。次ページでは、なぜOPCELを取得したのかを述べます。