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起業経験のある学生の見極めが重要
もし、あなたが起業経験のない採用担当だったらどう思うだろうか。起業経験のある学生がやってくると、自社の優秀な社長と同様のレベルのビジネス戦闘能力を持っているのではないかと思うかもしれない。だが、そのようなレベルの学生は採用の場には来ないし、社内にあなたのような採用専任者がいるようなレベルの企業を一から創り上げた学生は、そもそも就職することもなく事業を続けている。
単に起業したことがあるだけの学生はピンキリで存在する。だから、その起業経験は価値が高いのかを見極めることが大事だ。起業経験のある学生の採用ではなくても、起業をしたことがあるという就職希望者に面接で偶然出会うかもしれないが、騙されないようにしてほしい。
起業経験のある学生には売上をどれだけ出せたかを聞け
起業経験のある学生のほとんどがそうであるとは言わないものの、法人登記だけして自己満足で終わってしまう学生が少なくない。そんなときに聞いてほしいのが、どれだけ売上を出したかである。本来、事業であれば重要なのはどれだけ利益を出したかではあるが、利益を出している学生起業家は事業を続けているため、採用の場には現れない。売上を出したが、コストがかさんで赤字になって事業をたたまざるを得なかった学生は狙い目である。
売上を立てられたということは、少なくとも事業を立ち上げてある程度のサイクルを回したことになるので、事業創造能力があるといって間違いない。
ポジションも聞こう
学生起業も一般的な起業と同様に会社の中での役割が重要で、代表取締役社長といち創業メンバーとでは身についているスキルが大きく異なる。創業メンバーでずっと事業にコミットしている人なら問題ないが、途中で入ってちょっと携わっただけとか、途中で辞めているのに起業経験があるといって就職活動に臨む学生がいる。そうした学生はあまり優秀でないパターンが多い。
社長ではなかった場合、具体的に社内でどういう役割をしていたか、そして個人としてどれくらい貢献したか聞いてみよう。あいまいな答えが返ってきた場合、大した貢献をしていないことがほとんどである。
なぜ起業経験のある学生が入社したのか
起業経験のある学生を採用できている企業としては、サイバーエージェントやDeNAが挙げられる。これらの企業は起業経験のある学生をうまく取り込み、社内で育成し、事業責任者として育成することに成功している。
ここで、ドラッグストア、小売の人材プラットフォーム事業を手掛けるウェルマーケ株式会社の代表取締役 与田良介氏(28歳)に伺った話を紹介しよう。与田社長は学生時代に起業し、一度ITベンチャーに就職した経験を持つ。与田氏によると、もっと成長できるかがカギだという。
「私は、慶應大在学中、大学1年から4年のときまでAO義塾というAO入試に特化した塾を立ち上げて、売上も伸ばしました。取締役という立場でNo.2でしたが、経営から現場の生徒の指導まで何でもこなし、売上になることはなんでもしていました。
AOという受験制度が不評であったことも重なって、世間からバッシングを受けることもありましたが、様々な課題を乗り越えたことが今の自分の人生の糧になっています。
自分の経験から、受験指導なら事業を創れそうだし、かつAOはこれから伸びる市場だったので、同じ大学の友人と共同創業という形で会社を立ち上げました。大企業の若手社会人よりも給料をもらっていて、学生起業家のカテゴリでは成功していたほうでした。しかし、結局私はDeNAへの就職を選びました。
当時、自分の経営者としての能力に限界を感じ、経験や知見のない領域での事業立ち上げが難しいと思っていました。具体的には、受験生として経験した塾領域や学生マーケティング以外で事業を立ち上げることができないのではと考えました。そこで、一度就職することにしたのです。
DeNAに入社した決め手は、自分と同じ高校を出て学生起業家として成功している先輩が受けていたり、英会話塾などを起業し売上を出していた東大生も同期にいたりなど、刺激のある仲間がいたことです。また、メンターであった社員や役員のビジネス思考力が自分とは比較にならないほど高く、優秀な人たちのもとで修業しようと思ったことも入社を決めた大きな理由になりました」(与田氏)
与田氏のように、学生起業していても、一度修行のために企業に入る場合もある。与田氏は金銭的にはある程度余裕があったものの、将来の成功を見越し、短期的に修行する道を選んだのである。
また、与田氏は入社後について、こう語っている。
「入社後は周りの社員や先輩が優秀すぎて、自分のビジネスレベルが恥ずかしく日々つらかったです。営業でも、起業経験があったとはいえ、“大人”が扱う1クライアントの予算は数千万円以上になる中、営業先の経営陣などを説得するだけの能力が自分に足りませんでした。
また、別事業部にいたときには、上司やその上司も起業家として成功した人だったことがありました。自分よりもはるかに実績のある人が上場企業であるDeNAにいて、驚きを隠せませんでした。
このような修行経験があったからこそ今の自分があります。間違いなくDeNAに入ったことは自分の大きな財産になりました。
私はその後、起業する道を選びましたが、DeNAやその他のITベンチャーにも、元起業家で会社内で事業を立ち上げ成功している人がいます。過去の学生起業レベルではできなかった規模のビジネスができているので、楽しそうに仕事をしています」(与田氏)