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DX人材の育て方の答えがここにある! 5つの手法の特性と効果を紹介

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 IT企業はもちろん、製造業や金融業などあらゆる業界において、DX人材の育成が急務です。そのための5つの育成手法──「自己学習」「座学型研修」「ワークショップ型研修」「実践型演習」「実務での育成(OJT)」が解説されているのが、4月15日(金)に発売した『DX人材の育て方』(翔泳社)です。今回は本書から、これら5つの手法について特性と効果について解説されたパートを紹介します。

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 本記事は『DX人材の育て方 ビジネス発想を持った上流エンジニアを養成する』(岸和良、杉山辰彦、稲留隆之、中川邦昭、辻本憲一郎)の「第6章 DX人材の育成手法」から「6-1 DX人材育成手法の考え方」を抜粋したものです。掲載にあたって一部を編集しています。

DX人材育成手法の考え方

 DX人材に限らず、人材育成にはいくつかの手法があります。そこで、DX人材の育成手法である「自己学習」「座学型研修」「ワークショップ型研修」「実践型演習」「実務での育成(OJT)」の各手法の概要と事例について説明します。それぞれの説明に入る前に、改めて人材育成の基本的な考え方、育成には「何が必要か」について振り返っておきます。

人材育成とは「できない」ことが「できるようになる」こと

 筆者は「人材の育成」とは、「『できなかったこと』が『できる』ようになり、以降、それを繰り返せること」と定義しています。

 ただし、「できなかったこと」の定義はしっかり定めることが必要です。自分ができると思っていることでも、他の人(上司、上長、同僚など)から見ると「できていない」「必要な水準に達していない」ケースもあるからです。

 このように「できていない」ことが曖昧で明確になっていないと目的がはっきりしないので、対策(育成方法)も明確にならず、適切な育成プログラムを作ることができません。したがって、人材育成には、まず「できないこと=できるようになるべきこと」を個人および組織全体で定義し、誰でも同じ認識が共有できるように明確化することが必要なのです。

 上司が「DX人材として成長してほしい」と部下に言っても、それだけでは部下は「DX人材とは何だろう。どうすれば良いかわからない」と迷ってしまいます。DX人材育成で最も重要なのは、「DX人材とはどのようなことができる人か」を明確にすることです。

 DX戦略は企業ごとの価値の組み合わせ(バリューチェーン)によって異なるため、DXを使ってどのような業務改革、経営改革を行うのかは、企業によって異なります。したがって、必要なDX人材像も企業によって異なるはずです。

 このため、「DXで何をするのか」を明確化し、必要な資質、能力を明らかにすべきです。その上で、どのように育成するかの方針を決め、その手段としての「育成プログラムをどう作るのか」を考える必要があるのです。

育成手法の種類と効果

 一般に、人材育成手法には、「自己学習」「座学型研修」「ワークショップ型研修」「実践型演習」「実務での育成(OJT)」などがあります。

 これはDX人材の育成でも同様で、この5つの育成手法をその特性、効果を考えながら組み合わせ、受講者の業務状況(時間はとれるか、勤務地などの物理的状況など)や得られる学習効果などを踏まえ、育成プログラムを考えていきます。

自己学習

 テキストや書籍、雑誌記事を読む、理解度テストを行う、eラーニングを受講するなどの方法です。多くの知識を吸収し、確認テストや試験で学習結果を客観的に自己把握できるタイプの教育方法に向いています。

 したがって、中小企業診断士やITストラテジスト、G検定などの資格試験、DX検定やDXビジネス検定、DX推進アドバイザー認定試験などの認定試験や確認テスト付eラーニングなどを使うと教育効果が出やすいと思います。

 注意したいことは、単にテキストや書籍を読む、雑誌を読む、Web記事を読むなど、目的が明確でない場合や、確認テストなどの知識習得の成果を確認する方法がない場合は、個人の裁量、判断によって知識の習得レベルがまちまちになり、時間をかけても育成効果が出ないことがあることです。

座学型研修

 最もオーソドックスな人材の育成方法です。教える側、学ぶ側どちらもそれほど手間はかからないのですが、受動型のため効果はワークショップ型研修よりも劣ることが多いと考えられます。

 また、研修場所の確保や、講師や受講者の移動時間、移動に伴う交通費、宿泊費などの関係から、時間とコストがかかる方法になります。

 そこで、講師も受講者も1つの場所に集合せず、オンライン会議システムで実施する、動画を各自PCやスマホで視聴するなどの方法が一般的になりつつあります。特に最近は短い動画などの教育コンテンツをスマホで視聴する方法(マイクロラーニング)が主流になってきています。

マイクロラーニング

 最大10分程度の短時間で完了できる動画、4択クイズなどの教育コンテンツ(マイクロコンテンツ)を使う学習方法のこと。隙間時間を使って効果的に学習できる。短い時間で完了できるコンテンツを使うのは、「人の集中時間は長く続かないので、隙間時間を有効活用し、こまめに学習できる環境が良い」という考えによるもの。

ワークショップ型研修

 基本は5~6人程度で1つの場所に集合してグループ討議や討議結果のまとめ、その発表(プレゼンテーション)などが含まれる能動的な方式の研修を意味します。ワークショップ型研修には、次のような効果が期待できます。

他人からの刺激による学習効果の向上

 他人との議論の結果、「自分の理解は深くない」「自分は理解できている」「自分の解釈と他人の解釈が違う」「他人は、そのように理解しているのか」などのいわゆる「気づき」が生まれ、それが刺激となり理解が深まるなど、学習効果の向上につながります。

競争意識による学習意欲の向上

 他人と一緒に参加しているので、「しっかり研修に参加しないといけない」「グループ討議でリーダーシップをとりたい」「他人に負けたくない」などの競争意識も刺激され、学習意欲の向上も期待できます。

アウトプットによる学習効果の向上

 ワークショップ型研修では発表を行うなど、必ず「アウトプット」をするべきです。アウトプットすることで、学習効果の向上が期待できます。これは、「他人に理解してもらえるようにすべき」「なぜ、こうなのか理由を書くべき」などをアウトプットする過程で考えることで、理解がより深まるからです。

他人に教えることによる学習効果の向上

 他人に教えることによる学習効果の向上も期待できます。受講者が他の受講者に教えるためには自分がしっかりと理解する必要があります。また、理解してもらうためには、説明の順番なども考えなくてはならないので、教えるという行為は、教わる側だけでなく、教える側の理解も深まるのです。

ワークショップ型研修に期待される効果
ワークショップ型研修に期待される効果
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DXにはワークショップ型研修が有効

 特に、研修テーマがDXなど受講者にとって新しく、これまで経験したものでない場合、受講者の頭の中には、それに関する知識やスキル、経験がないことがほとんどです。

 一般に、人は「新しいこと、未知なこと」よりも「既知なこと、慣れたこと、知っていること」を好む傾向があります。

 このため、DXといったこれまでの仕事では経験していない、知識もスキルもないような分野は、「学習意欲が向上しない」「理解が表面的なものにとどまる」「学習習慣が定着しない」などの学習効果が出ない可能性があります。このような場合に、「ワークショップ型研修」はとても有効だと考えています。

実践型演習

 DXを推進する人材を育成するために、実践型演習がよく実施されます。これは、架空のシステム開発のプロジェクトを想定し、ビジネス要件、システム要件、要件定義、設計、実装の各プロセスについて実際に手を動かしてシステムの設定やプログラミング、テストをしながら身につける方法です。

 特に、クラウドサーバーの設定、システム構造設計、プログラミング、テストなどは、従来型のシステム開発とは異なる新しい開発環境、ツール群を使う操作方法を習得する必要があるので、実践型演習は効果的な方法になります。

実務での育成(OJT)

 DXを推進する人材を育成するためには、実務での育成は欠かせません。特に、新しい知識やスキルが必要で、これまでにない仕事の進め方などをどのように実務で身につけてもらうかを考える必要があります。

 実務では、ワークショップや実践型演習で学べないことをしっかり身につけられるよう考える必要があります。

実務でないと「身につかない」能力

 たとえば、「プロデューサー」や「ビジネスデザイナー」が持つべきビジネス発想力、ビジネスを作り出す力、プロジェクトマネジメント力、社内調整力・社内政治力は、ワークショップや実践型演習だけでは身につきません。

 そこで、実務で指導者(チームリーダー、所属長、アドバイザーなど)がしっかり「仕事の型」となるべき「仕事の方針」「各種調査」「進め方」「関係部門との調整」「社内政治」「ベンダーやイネーブラーとの付き合い方」「社内決裁のルール」などを教え、実務で学んでもらう必要があります。

オープンイノベーションによる社外との交流による教育効果

 実務の一部ですが、社内での実務による教育だけでなく、社外との交流(オープンイノベーション活動)によって広く視野を広げ、知識や考え方、事例、仕事の進め方、共同ビジネス、共同プロジェクトなどを経験して学ぶことが有効です。

 このため、定期的に社外勉強会に参加する、ベンダーやイネーブラーと情報交換をする、学会などで研究する、雑誌記事や書籍を執筆するなどの活動もDXで必要な能力を身につけるための優れた育成方法になります。

 チームメンバーは、人脈がない場合や、社外に出て多くの人と意見交換する、研究をすることに「気が引けてしまう」場合も多いので、メンバー任せにすることは避けるべきです。指導者は、チームメンバーがオープンイノベーション活動に入っていけるよう、仕事の一部として任命することが必要です。

DX人材の5つの育成手法
DX人材の5つの育成手法
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DX人材の育て方

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DX人材の育て方
ビジネス発想を持った上流エンジニアを養成する

著者:岸和良、杉山辰彦、稲留隆之、中川邦昭、辻本憲一郎
発売日:2022年4月15日(金)
定価:2,200円(本体2,000円+税10%)

DX人材の役割から育成現場の現状、具体的な育成方法や研修マニュアルまでを詳細に解説。DX人材を取り巻く環境・全体像と具体的な育成方法をまとめて知ることができる1冊です。

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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