「知識不足ゆえに残業続き」からの脱出作戦
私は現在、株式会社サーバーワークスに勤務し、クラウドエンジニアとして働いている。クラウドエンジニアになる過程でLPICレベル1、レベル2、そしてレベル3を取得してきたが、それはエンジニアとしてのスキルが身に付くだけでなく、それ以上の効果をもたらしてくれた。本稿では、LPICレベル3「LPI-304 Virtualization & High Availability」(以下、LPI-304)まで取得したことによって仕事や人生がどう変わったのか、私の経験をお伝えしようと思う。
まずは、私がLPIC取得に挑むに至った経緯から。
そもそも、ITエンジニアになろうと思ったきっかけは、学生時代に趣味で自分のWebサイトを持ったことだった。卒業後に上京して、第二新卒で念願のSI企業に入社。それから1か月後、大手電機メーカーのECサイトを担当することになった。
しかし、待っていたのは、帰宅が終電近いこともしばしばという日々。Unix/Linuxで行う業務は初めてで、知識が決定的に不足していたことが原因だ。
自宅と職場の往復だけで毎日が終わるのではなく、プライベートも充実した生活を送りたい。それにはスキルだ。自分にもっとスキルがあれば、残業の泥沼から抜け出せるはず――そう考えて目標にしたのが、Linuxエンジニアの認定資格であるLPICの取得だった。
つまり、「LPICを取得する」という私のチャレンジは、いわば自分の生活を取り戻すことが目的で始まったわけである。
資格取得に成功するための3つのポイント
LPICを取得するという目的は、その後、達成することができた。そのときに得た3つの学習ポイントをここで紹介する。LPICだけでなく、他の資格でも応用可能だと思うので、ぜひ参考にしてもらいたい。
【ポイント1】学習計画を立て、先に試験を予約してしまう
平日と休日、それぞれどの程度学習できるのか。まずはこの自身のペースを把握して、カレンダーの予定に学習スケジュールを入れておこう。どうしても学習時間が足りないときが出てくるが、私は通勤時間中・昼休み中に学習時間を捻出した。
また、目標を達成するために、可能であれば先に受験予約を取ることをお勧めする。このとき、受験日時は何日前まで変更可能なのかも調べておこう。そうしておけば、予定外の業務や体調不良などが発生した際、無理せずに別日程へ変更できるからだ。
【ポイント2】ご褒美作戦によるモチベーションの維持
試験に合格したときに出す自分への「ご褒美」を決めると、学習意欲は格段に高まる。私の場合、「資格を取得したら、趣味としてカメラを始める」といったご褒美をセッティングした。実際、欲しい一眼カメラを手に入れた自分をイメージしながら継続して学んでいくようにしたら、集中力が増した。
ただの口実になっているだけかもしれないが、モチベーションを維持をするための工夫をしよう。
【ポイント3】実機やクラウド環境で手を動かして学ぶ
実機で手を動かしながら学び、教科書で繰り返し学習することにより、脳内に知識が蓄積されていく。一度で覚えられなくても諦めないでほしい。反復学習することで、確実にスキルとして身に付いていくからだ。
業務で習得した以外の出題範囲については、LPICの教科書と、実機のLinuxマシンを動作させて学習した。最近では「Raspberry Pi」という小さく安価なマシンにLinuxをインストールすることで学習環境が手に入る。実機の用意が難しい場合は、Amazon EC2やさくらのVPSなどのクラウド環境を活用する方法もある。
これらを利用できるようになったことで、実機で学ぶ敷居は確実に下がっている。実機を使った学習はぜひ行ってほしい。
LPICの取得はその後の人生を大きく開かせるきっかけに
LPICのレベル1を取得した後も学習を続け、結果的にレベル2、レベル3(301)まで取得することができた。すると、仕事に目を見張るような効果が現れた。まず、自分からプロジェクトに積極的に参加するようになった。業務も安心して任せてもらえるようになり、実践的な構築業務や運用業務の主担当に抜擢されるまでになった。構築・運用の業務を一通り経験し、一人前のエンジニアとして認められるようになったこともあるが、資格取得が自信につながったことが何より大きいと思う。
ちなみに、LPICの認定者は名刺へのロゴ使用が認められている(LPI-Japan「LPIロゴの使用について」)。初対面のお客様と打ち合わせるときなど、自身の経歴を紹介せずとも名刺に印刷されたロゴで、この人はLinuxのスキルがあるのだと一目で理解してもらえる。そういった安心感を与えてくれるのも、LPIC取得のメリットだろう。
もちろん、当初の目的どおり、残業を減らすことにも成功した。定時で帰ることができるようになり、プライベートも充実して人生がより豊かになった。さらに、仕事以外へ視野が広がり、それが仕事の生産性を向上させていることも感じた――この気付きが、その後、自分の人生を大きく開かせることになる。