組織文化とは何か?
——そもそも文化とはどういうものなのでしょうか。
文化はさまざまに定義されていますよね。ここでは、「文化と経営の父」と呼ばれるヘールト・ホフステード博士の定義を紹介します。博士の論文は、マルクス、フロイトに次いで引用数が多く、世界的にも知られています。
博士は文化を「ある集団と他の集団を区別するマインドのプログラミング」と定義しました。言い換えれば、文化とは「私たちのやり方」です。つまり組織文化とは、「組織にいる私たちのやり方」です。

宮森 千嘉子(みやもり ちかこ)氏
アイディール・リーダーズ株式会社 CCO(Chief Culture Officer)
「文化と組織とひと」に橋をかけるファシリテータ、リーダーシップ&チームコーチ。サントリー広報部勤務後、HP、GEの日本法人で社内外に対するコミュニケーションとパブリック・アフェアーズを統括し、組織文化の持つビジネスへのインパクトを熟知する。また50ヵ国を超える国籍のメンバーとプロジェクトを推進する中で、多様性のあるチームの持つポテンシャルと難しさを痛感。「違いに橋を架けパワーにする」を生涯のテーマとし、日本、欧州、米国、アジアで企業、地方自治体、プロフェッショナルの支援に取り組んでいる。英国、スペイン、米国を経て、現在は東京在住。著作に「強い組織は違いを楽しむ CQが切り拓く組織文化」、共著に「経営戦略としての異文化適応力」(いずれも日本能率協会マネジメントセンター)がある。一般社団法人CQラボ主宰。
——ビジネスでは組織風土、企業文化、企業カルチャーなど、いろいろな言い方をしますよね。
言葉遣いは異なりますが、多くの企業が統合報告書などで組織文化について触れていますよね。人事を担う部門を「ピープル&カルチャー部門」と呼ぶ企業も増えています。「組織文化を語らずにビジネスは進められない」という時代になってきているということかもしれません。
しかし言葉が広がっているわりには、組織文化に対しての理解はそれほど進んでいない印象があります。
たとえば、「コミュニケーションを活発にしさえすれば組織文化は良くなる」という誤解はないでしょうか。
組織文化に対するよくある誤解
——確かに、「コミュニケーション活性化のために懇親の場を増やそう」という声はよく耳にします。
はい。ただ私たちは1人ひとりが異なる文化背景を持っています。ですからコミュニケーションの傾向も文化によって違います。
たとえば、アメリカは明るくフランクなコミュニケーションが好まれますよね。一方でロシアは寡黙で真剣であることが信頼を生みます。「ほほえみは疑わしい」という判断です。
こうしたことを知らないと、懇親の場が何かのトラブルの種を生んでしまうかもしれません。
——なるほど。他にはどんな誤解がありますか。
「1つの強い組織文化をつくれば、企業として強くなれる」というのもよくある誤解です。1つの企業の中に組織文化は複数あってもよいものなんです。
たとえばスタートアップ企業は挑戦を好みますよね。「失敗は成功のもと」だと考えられています。
ただどうでしょう。もしも社員全員が挑戦ばかりしていたら、企業として機能しなくなります。経理や人事などの仕事は決められたルールにのっとることが大事です。「失敗」はあってはならないでしょう。
ですから実は、組織文化は各部門やチームによって異なってよいものです。
また、1つの組織文化でまとまっていたとしても、誤った方針であれば、不祥事や事故などにつながる可能性もあります。「強い組織文化=強い企業」というわけではないのです。
そこで、組織文化を扱うために重要になるのがCQ(文化の知能指数)です。