パーソル総合研究所は、「働く人のウェルビーイング実態調査 2025」の結果を発表した。
同調査は、就業者の「職業生活ウェルビーイング」の認識と実態(経年変化)を把握するとともに、その要因を明らかにし、継続的な維持・向上のためのポイントを提示することを目的としている。職業生活ウェルビーイングとは、自分の仕事に満足し、働くことを通じて、社会とのつながりや貢献、喜びや楽しみを感じることが多く、怒りや悲しみといった嫌な感情をあまり感じずにいる状態。また、そのような仕事や働き方を自分で決めることができている状態のこと。
同調査における、働くことを通じて感じる幸福感や不幸感の要因は、それぞれ7つの因子で構成され次のように定義。7つの因子の状態を良好に保つことによって、職業生活ウェルビーイングを高められる。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/1.jpg)
ウェルビーイングの認知度(経年変化)
「ウェルビーイング」という用語の認知度を有職者に確認したところ、27.1%が「意味を知っている」と回答した。2023年同時期の15.9%と比較して、11.2%増加している。また、「聞いたことがない」割合も48.1%と半数を下回る。なお、直近の認知度は、「エンゲージメント」の24.6%を上回っており、ビジネスパーソンの間で一定程度定着が進んでいる。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/2.jpg)
ウェルビーイングとエンゲージメントのイメージ比較
働くうえでの「ウェルビーイング」と近似する概念として「エンゲージメント」と比較した。結果、エンゲージメントもウェルビーイングも仕事に対して「意欲的」で「継続的」で「真面目な」イメージが共通していた。
しかし、ウェルビーイングには、「ゆったり」「健康的」「ほっとした」「私生活中心」「ゆるい」「余裕がある」といった、心身の安定や自然体を想起させるイメージが特徴的であった。これに対し、エンゲージメントは「ガツガツ」「ドキドキ」「仕事中心」「厳しい」「忙しい」といった、仕事への強い集中や緊張感を伴うイメージが強く表れている。
すなわち、両者はともに前向きな仕事への姿勢を示しながらも、ウェルビーイングは「バランスと余裕」、エンゲージメントは「力強さと負荷感」という対照的な側面を持つことが明らかになった。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/3.jpg)
働く幸せ/不幸せ実感の経年比較(2020~2025年)
働くことを通じた主観的な実感として、幸福感/不幸感(単項目)について就業者に確認した。2020年時点と比較すると、幸福感を得ている人の割合は40.8%と3.1ポイント減少し、不幸感は22.5%と2.3ポイント増加していた。また、「幸せを感じない」と回答した割合も増加傾向にある。これらのことから、仕事を通じた主観的な幸福感/不幸感は、やや悪化傾向にあることが分かる。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/4.jpg)
働く幸せ/不幸せ因子の経年変化(2020~2025年)
働く幸せ/不幸せ実感の主たる要因となる、7つの因子スコアについて経年比較を行った。その結果、働く幸せ因子は「役割認識因子」を除いて全般的に低下傾向にあり、不幸せ因子は「評価不満因子」を除いて全般的に低下していた。
不幸せ因子の一部で改善傾向が見られるものの、働く幸せ実感および各因子の低下は、ワーク・エンゲージメントの低下を招くリスクをはらんでおり、注意が必要である。働く幸せ実感は、ワーク・エンゲージメントの先行要因となる(2020年調査結果より)。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/5.jpg)
学生の働くことへのイメージ
学生に対し、働くことに関連付けられる複数の言葉(ポジティブ/ネガティブ)を提示し、働くことのイメージを確認した。学生は、「自由に使えるお金」「趣味や欲しいもののため」といった経済的側面が上位となり、「忙しい」「人間関係が大変」といったネガティブな懸念も上位に上がる。
また、「成長」「人との出会い」といったポジティブな期待感もあがり、経済的充足を求めるリアリズムと共に期待と不安が入り混じっていることが分かった。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/6.jpg)
学生から見た「親の働く姿」
学生(高校生~大学院生)に対し、親の働く姿(働いていて幸せそうに見えるか)について印象を確認した。全体の36.2%は「幸せそうだ」と回答したものの、23.3%は「幸せそうではない」と回答した。この傾向は、就業者自身が感じている主観的幸福感(40.8%)と近似しており、親世代の働き方や職業生活実態が、家庭生活を通じて子どもにも伝わっている可能性が示唆される。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/7.jpg)
親の働く姿と子どもの働くイメージの関係
親の働く姿に対する子ども(学生)の印象と、学生の働くイメージ「ポジティブ/ネガティブ項目」との関連を分析した。結果、親が「幸せそうに見える」学生ほど、働くことへのポジティブなイメージを持っており、「幸せそうに見えない」学生ほどネガティブなイメージを持っていた。
同分析は相関であり因果関係ではないものの、中でも「楽しい」は35.2ポイントの差が生じており、家庭内での親(就業者)の働く姿の印象が、子どもの労働観やキャリア観の形成に影響する可能性が示唆される。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/8.jpg)
フォーカシング・イリュージョン(焦点化錯覚)
就業者の相対的な重視度では「リフレッシュ因子」は3位となった。しかし、順位づけで「リフレッシュ因子」を1位に挙げた人は最も多かった。リフレッシュ因子を1位に挙げる人は、フォーカシング・イリュージョンが生じている可能性がある。実際、リフレッシュ因子重視の人が次に重視するのは「オーバーワーク因子」であり、それ以外の因子は全体平均よりも低く位置付けられる。
影響度が高いにもかかわらず、「他者貢献因子」「自己成長因子」「自己抑圧因子」などに意識が向いていない傾向があった。リフレッシュ因子はウェルビーイングにとって重要だが、他の因子とのバランスも必要だという。日々、仕事に追い立てられないよう段取りし、過小評価しがちな他者貢献や自身の好奇心を満たすことなどにも目を向けることが重要である。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/9.jpg)
幸せを感じる体験がウェルビーイングの出発点
ウェルビーイングであることを求め能動的に行動することを「ウェルビーイング・クラフティング」と称し、職業生活におけるウェルビーイング・クラフティングを促進するメカニズムを検証した。結果、次図のように、直近の「働く幸せ実感」を起点として、「働く幸せを重視する価値観」が醸成され、「自分の働く幸せの理解」が深まる。
価値観醸成、幸せの源泉の理解が深まることで「幸せに働くための工夫(クラフティング)」が促進され、その結果さらなる「働く幸せ実感」が獲得される。すなわち、持続的な職業生活ウェルビーイングの実現には、日常の仕事の中で実際に働く幸せを実感することが重要だという。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/10.jpg)
ウェルビーイング・トランジション(ウェルビーイングを左右する要因が時とともに移り変わること)
就業者に対し、これまでの職業生活において幸せに感じる事柄(要因)の変化を自覚したことがあるかを聞いた。その結果、「大きく変わったことがある」と答えた人は24.4%、「変わったことはない」は56.3%であった。
性別では大きな差は見られなかった一方で、年代別では30代以上で「変化した」と答える割合が増加する傾向が見られた。ライフステージの移行や経験の蓄積により、ウェルビーイング・トランジションが生じる可能性がある。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/11.jpg)
働く事を通じて幸せだと感じやすくなったことについて、その変化が生じた年齢と7つの因子の観点で確認した。その結果、20代・30代で「リフレッシュ因子」をあげる割合が顕著に多く、次いで「自己成長因子」や「役割認識因子」「チームワーク因子」が続いた。60代では、「役割認識因子」「チームワーク因子」「他者承認因子」といった集団への所属と貢献をあげる傾向が確認された。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/12.jpg)
一方、働く事を通じて不幸せだと感じやすくなったことについて、その変化が生じた年齢と7つの因子の観点で確認した。その結果、20代・30代では「オーバーワーク因子」をあげる割合が多く、次いで「評価不満因子」や「理不尽因子」などが上がった。「評価不満因子」は40代以降でも上位にあがるが、50代では「疎外感因子」も同列で上位に。60代は、「評価不満因子」や「自己抑圧因子」といった能力発揮機会と評価に意識が向く傾向が見られる。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/13.jpg)
なお、調査の概要は次図のとおり。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/7180/14.jpg)
【関連記事】
・75%がZ世代社員のマネジメントを「難しい」と回答 不満は「指示待ちな姿勢」が最多—月刊総務調べ
・従業員の成長を促す対話型AIサービス「GrowNavi Reflect」を提供開始—NTT ExCパートナー
・福利厚生サービス「働くあなたのマネーポータル」を提供 従業員の経済的不安を軽減—SmartHR調べ