定着やキャリア形成を見据えた中長期的な支援が必要
最後に、それぞれのビザを持つ人材に対し、必要だと思われる支援をまとめました。
- 共通する支援
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- 日本語学習支援:業務理解・職場コミュニケーションを円滑にするため、語学研修や教材の提供
- 生活支援:銀行口座開設、医療機関の利用案内など、日本での生活基盤を整える支援
- 職場定着支援:異文化理解研修、メンター制度の導入、ハラスメント防止策など、双方のミスマッチを防ぐ仕組み
- キャリア相談:キャリアパスの見通しや将来の資格変更の可能性についての情報提供
- 高度専門職系特有の支援
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- 専門スキルのブラッシュアップ:業務分野に応じた高度な研修、専門的資格の取得支援
- キャリア開発支援:マネジメント職や専門職としての長期的な昇進ルートを示す
- 永住・定住へのガイド:在留資格の更新や永住権取得への道筋を意識した人事制度整備
- グローバル人材ネットワーク形成:海外留学経験や語学力を活かした異動、国際部門での活用
- 特定技能特有の支援
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- 義務的な支援体制(法定義務):在留資格にひもづく登録支援機関または受け入れ企業による生活オリエンテーション、日本語学習支援、相談窓口設置、公共サービスの利用方法などの行政手続き
- 現場業務への即応研修(任意):介護や外食など現場に特化したOJT・技能研修
- 在留資格移行支援(任意):特定技能1号から2号への移行や、将来的に安定的な在留につながる制度利用の案内
外国籍労働者をサポートして、持続的な戦力に
外国籍労働者に対する支援は、来日直後の短期的な生活立ち上げから始まり、中期的な定着支援、さらに長期的なキャリア形成支援へと段階的に広がっていくことが求められます。
まず、渡日直後には銀行口座の開設、役所での各種手続き、医療機関や交通機関の利用といった生活基盤の整備が不可欠です。同時に、日本の法律上のルールや就業規則、職場文化についてのオリエンテーションを行い、職務を行ううえで必要な日本語教育を提供することで、外国籍人材が安心して生活と仕事を始められる環境を整えられます。
次の段階では、業務を通じて専門的なスキルを習得できるOJTや研修を充実させるとともに、本人のキャリア志向を確認する面談や評価制度を設けることも重要だと考えます。また、職場側に対しても異文化理解やマネジメントに関する教育を行い、ミスマッチや摩擦を防ぐ取り組みが求められます。さらに、在留資格の更新や上位資格への移行を視野に入れたサポートは、本人のキャリア継続への安心感につながります。
長期的には、単なる労働力確保にとどまらず、昇進や専門資格の取得を支援し、外国籍人材がリーダーや管理職として活躍できるキャリアパスを提示することが必要です。その他、家族の教育や医療、住宅ローンや保険加入といった生活面の支援も、外国籍人材が社会に定着するうえで大きな意味を持つと考えられます。永住や定住の申請に関する情報提供や制度上の支援を行うことで、働く本人が中長期的なライフデザインを描きやすくなります。
短期的な生活支援から中期的な定着支援、そして長期的なキャリア発展支援までを一貫して提供できると、外国籍人材が日本社会に根づき、企業にとっても持続的な戦力となるのではないかと考えます。

