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特別寄稿《人材活用》| 配置・配属

社内公募制度の落とし穴と解決策 「求人に応募がない」理由から考える

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 人材を求める部署が社内で募集をかけ、意欲ある他部署の社員が自発的に応募する「社内公募制度」の導入が、大企業を中心に広がっている。日本でも働き手の生産性向上や専門性を高めるジョブ型雇用へのシフトが叫ばれる中、多様な部署で経験を積むことは社員のモチベーション向上、個人のキャリア自律につながる。一方、制度を導入したものの「求人を出してもいっこうに応募がない」と悩む企業が多いことも現実だ。本稿では、当社(筆者が代表取締役を務める株式会社アールナイン)が社内公募制度の円滑な導入・運用をサポートする中で遭遇した実例をもとに、企業がはまりがちな落とし穴とその解決策を伝えたい。

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社内公募の目的と広がる背景

 社内公募の概念は古くからあるが、注目されるようになったのは近年だ。少子化で労働人口が減る中、国は1人ひとりの生産性を高めることで、長年低迷する賃金の持続的向上を図る必要性に迫られている。そのためには転職支援や学び直しを通じて、働く人を新しい成長分野の産業に移動させ、自律的なキャリア形成を後押しする取り組みが欠かせない。

 このような文脈から、従来は企業主導だった人事異動も、社員の自発的な意思に基づく「社内公募」に移行し、スキルを持つ若手・中堅社員が活躍しやすい環境の整備が求められるようになった。リクルートマネジメントソリューションズが296社を対象に実施した調査(2022)によると、すでに42.2%の企業が社内公募制度を導入している(下図)。組織に入るだけでは階段型の昇進が見込めなくなったいま、社内公募は社内人材の流動性を高めて個人の閉塞感を打破するとともに、部署間のコミュニケーションを活発化させ、企業業績にも好影響を与えると期待される

(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「個人選択型HRMに関する実態調査」)
(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「個人選択型HRMに関する実態調査」)
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社内公募制度の導入メリット

 社員が社内公募を利用する最大のメリットは、転職せずとも自身が希望する仕事に挑戦する機会が得られ、将来の選択肢が広がることだ。同じ部署の1歳上の先輩だけがロールモデルになるとは限らなくなったいま、個人のキャリアは核となるスキルに、複数のスキルを掛け合わせて花開く。未経験では転職が難しい職種も、社内異動なら挑戦がかなう場合がある。

 企業側にも、優秀な人材の流出防止、長く働きやすい環境作りを実現できるメリットがある。社外から未知の人材を採用するより低コスト・低リスクで、高い意欲と能力を持った人材を補充できる点は大きい。大企業では「競合他社に人材を奪われるくらいならば」と異動先を社内にとどめず、グループ会社、取引先まで巻き込む概念も登場しつつある。

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この記事の著者

長井 亮(ナガイ リョウ)

株式会社アールナイン 代表取締役。1999年青山学院大学経済学部卒業。株式会社リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。 連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社、株式会社アールナインを設立。 これまでに2000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5000人を...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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