システム導入によって力量管理者の負担が軽減
——これまで行ってきた力量管理について教えてください。
橋本正夫氏(以下、橋本) 私ども開発推進部には、血圧計や体温計などの設計に携わるメンバー(以下、設計者)がいます。設計者の力量が製品品質の確保に直接関わってくるため、1人ひとりの力量管理(取得した資格や技術・技能、知識などの管理)は10年前から行っており、その仕組みも確立できました。
しかし、設計者の力量をまとめている「一覧表」は部課別のExcelフォーマットでつくられており、組織変更や人事異動のたびに、力量管理の担当者(渡邊氏)が手作業で更新する必要がありました。また表を印刷したとき、用紙がA3サイズであっても文字がたいへん小さく、読みづらいのが悩みでした。
さらに、Excelフォーマットであるため、個人情報保護の観点で、一覧表は限られたマネージャーしか閲覧できませんでした。設計者本人も自分のデータを直接は閲覧できません。データ活用や情報公開はごく限られているという状態でした。
なお、一覧表は1年ごとに更新しています。その年に誰がどのようなスキルを身に付けることが望ましいか、スキルの級を上げるか上げないかといった計画を期初に立て、期末にマネージャーが実績を承認して、印刷した一覧表に署名・押印してバインダーに綴じて保管しています。

橋本 正夫(はしもと まさお)氏
オムロン ヘルスケア株式会社 商品開発統轄部 開発推進部 部長
2001年にオムロン ライフサイエンス研究所に入社。機械系設計者として医療システム機器や体温計の商品開発、開発支援業務(業務改革など)に従事。2022年9月から現職。開発業務改革や設計人財育成などを推進。
——一覧表をなぜわざわざ紙に印刷するのですか。Excelといえどデジタルデータですから、管理は紙よりも楽だと思うのですが。
橋本 これは法規制要求で、データだけだと改ざんが分からないためです。いつ、どのように行われたのかの履歴も残りません。そうなると、情報として信用できないということになります。それで力量管理者の渡邊に、膨大なタスクを負担させていました。
更新時には、各部門の設計者個人からの申請用データや、マネージャーが承認したデータを紙やメールでもらい、一覧表に入力します。入力の前には部門全体での承認も必要で、渡邊はその資料自体もつくっています。承認後、一覧表に入力もします。
——渡邊さんは力量管理者として、他にどんなご苦労をされていますか。
渡邊庸一郎氏(以下、渡邊) 設計者から力量に関する問い合わせが来たときの回答に手間がかかります。一覧表は限られたマネージャーしか閲覧できないので、各設計者からの問い合わせ、たとえば、自分の力量を知りたいとか、何が認定されているのかというような質問は、すべて私に集中します。そのたびに一覧表の内容を確認し、回答をするのですが、そのやり取りが大変なんです。一覧表は個人情報保護の観点で厳重に管理しないといけませんが、もっと有効に活用できないのかなと思っていました。
今回のタレントマネジメントシステム導入で、人事異動のたびに一覧表に入力する手間は省けましたし、設計者自身がログインして、自分のデータをチェックできるようになりましたから、私への問い合わせはかなり減るでしょう。年度末にどうなるのか、とても楽しみです。

渡邊 庸一郎(わたなべ よういちろう)氏
商品開発統轄部 開発推進部
2006年にオムロン ヘルスケア株式会社に入社。商品開発、開発支援業務(設計変更対応など)を経て、2013年から設計者の力量管理を担当。現在は力量管理以外に若手設計者育成管理や新人技術者研修の企画も担当。