多様化する採用手法と今後の注力ポイント
ベネッセ i-キャリアの村山和生氏は、2025年6月に実施した823社へのアンケート調査をもとに、企業における最新の新卒採用動向を解説した。
現在の新卒採用手法について、「一括採用」を行っている企業が70.5%と依然として主流ではあるものの、「通年採用」(53.4%)や「職種別・コース別採用」(44.6%)を行う企業が増えており、新卒採用の手法の多様化が確認された。村山氏は、「採用手法が多様化している中で、これに伴うスケジュールの変化やそれぞれの手法に適したアプローチの違いなどに対応することが重要だ」と指摘する。
また、現在力を入れている取り組みとしては、64.0%の企業が「就職情報サイトや就職支援サービスを活用」と回答している一方で、本来力を入れたい取り組みとして多く挙がったのが「大学教職員やキャリアセンターなどとの連携」(20.9%)「SNS等での自社広報」(20.2%)であった。
「すでに大学と連携しており、今後も継続する企業は40.0%、今後連携することを検討している企業は23.7%という結果も出ている。つまり、大学との連携に前向きな企業は6割を超えており、特に中小規模の企業において今後拡大していく見通しだ」(村山氏)
「汎用的スキル」とは何か?期待とのギャップが明らかに
インターンシップや本選考の基準として重視している項目を聞いた設問では、どちらも「人柄や性格」がトップであった。次いで、順番は変わるものの、インターンシップと本選考どちらも「汎用的スキル(思考力・問題解決力など)」(インターンシップ2位、本選考3位)と「自社への熱意」(インターンシップ3位、本選考2位)が続く。
しかし、村山氏は「これらの採用基準と実際に採用した学生の水準との間には、ギャップが存在することが明らかになった」と述べる。調査によると、8割以上の企業が何らかのギャップを感じており、最もギャップが大きい項目が「汎用的スキル」(14.3%)であった。村山氏は、「人柄や熱意はしっかり見極められている企業が多い一方で、汎用的スキルは、重視はしているものの学生にもっと高めてほしいという期待がギャップとして表れている」と分析する。
さらに本調査では、インターンシップなどのプログラムの選考開始時期は「3年生4~5月」という認識で企業と大学でおおむね一致しているものの、この時期までに動けている学生は全体の4分の1に満たないことも分かった。
「汎用的スキルは、ある意味“バズワード”のようになっており、企業によって定義が異なるスキルだ。また、学生が就活に“効率性”を求めるあまり、入社後にミスマッチが起こるケースが散見される。自社の選考基準における汎用的スキルを具体的な行動特性(コンピテンシー)として定義し、大学や学生に対して具体的に提示することが重要である。さらに、大学と企業の連携を深め、低学年時からのキャリア教育が求められていることも示唆された」(村山氏)

