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人事労務事件簿 | #66

早出の労働時間、振替休日が示されない休日出勤に割増賃金の支払い命令(東京地裁 令和6年9月17日)

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2. 裁判所の判断

(1)始業時刻前の時間外労働の有無およびその時間について

①基本的な考え方

 労働基準法32条の労働時間は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。

 上記の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより、客観的に定まるものである。労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない。

②オープン時刻前の出社について

 Xは、午前8時45分より前の時刻であっても、Yジムの明示または黙示の指揮命令下で顧客に対するトレーニング指導を行っていたというべきである。

 したがって、その就労に係る時間は、Xの労働時間に当たるというべきである。

③始業時刻の認定

 たとえば、午前8時にタイムカードが打刻されている場合、同じ時刻に顧客に対するトレーニング指導が開始されるとは考えにくく、午前8時30分からトレーニング指導が開始されたとみるのが相当である。

 同様に、午前8時30分にタイムカードの打刻がされている場合は、午前8時45分から就労が開始されたとみるべきである。

 こうしたことも考慮すると、Xの始業時刻については、勤怠管理表の「始業」欄記載の時刻またはタイムカードの「出」欄記載の時刻に基づき、以下のとおり認める。

  • 午前7時29分以前の時刻:午前7時30分を始業時刻と認める
  • 午前7時30分から午前7時59分までの時刻:午前8時を始業時刻と認める
  • 午前8時から午前8時29分までの時刻:午前8時30分を始業時刻と認める
  • 午前8時30分から午前8時44分までの時刻:午前8時45分を始業時刻と認める
  • 午前8時45分以後の時刻:その時刻を始業時刻と認める

(2)休日の振替が認められるかについて

①Yジムの休日の振替管理の状況

 Yジムは、振替休日に関する規定のある就業規則が整備され、従業員に周知されていたこと、日曜日の出勤を予定しているXに対し、振替休日の日を明記したシフト表を事前に示していたことを理由に、Xが日曜日に出勤したと主張する日につき、休日の振替が認められる旨主張する。

②休日の振替に関する基本的な考え方

 休日の振替が認められるためには、労働者に対し、あらかじめ振替休日の日を指定し、特定の休日を労働日とする旨を通知することを要すると解される。

③Y社の主張を認めず

 一方で、Yジムが主張するシフト表のXの欄には、「公休」等の記載があるだけで、振替休日の日として指定されたと理解しうる記載が見当たらない。

 そのうえ、「公休」等の記載が振替休日の日を指定したものであることを認めるに足りる証拠もない。

 仮に「公休」の記載が振替休日の日を指定したものであるとしても、シフト表において「公休」と記載された日がどの労働日の振替休日であるのかを示す記載がなく、労働日となる特定の休日や振替休日の日がXに適切に通知されていたのかは判然としない

 こうしたことからすれば、シフト表に基づくYジムの休日の取り扱いは、休日の振替に関する要件を満たすものとは認められない。

④休日の振替は認められないと判断

 したがって、Yジムの就業規則が従業員に周知されていたかどうかにかかわらず、Yジムの上記主張は採用することができず、休日の振替は認められない。

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3.要点解説

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この記事の著者

坂本 直紀(サカモト ナオキ)

人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。
ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、書式等を掲載中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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