精神論でなく仕組み 楽天が全社でAI活用を加速させるサイクル
セッション後半のテーマは、「AI時代に自走し続ける組織のつくり方」だ。
AIの普及と組織の在り方は、切っても切れない関係になってきていると述べるモデレーターの飯田氏。そこで、楽天グループの小林氏とコカ・コーラ ボトラーズジャパンの東氏に、「AIを活用して自律的に動けるようになる組織もあれば、なかなか取り入れられない組織もある。そもそも人事は自律した組織をどうつくるべきで、AIはそれをどう加速させるのか」と疑問を投げかけた。
小林氏は、楽天は「人間は本質的に楽をしたがる生き物である」という前提のうえで、精神論ではなく仕組みでカバーしていると述べた。
「手を抜くわけではないんだけれども、自分に優しくなってしまう瞬間がある。そこで、目標を掲げ、それを達成するためにKPIに分解して細かく確認する。そんな仕組みづくりが重要です」(小林氏)
小林 正忠(こばやし まさただ)氏
楽天グループ株式会社 常務執行役員 Group CCuO
1997年楽天創業から参画。EC事業責任者等を歴任後、2012年米国へ赴任し米州本社社長、2014年シンガポールを拠点とするアジア本社社長を歴任。グローバルマネジメント経験後、CWO(チーフウェルビーイングオフィサー)を経て、現在はGroup CCuO(チーフカルチャーオフィサー)。2001年から出身大学に「正忠奨学金」を創設し、若者の育成にも注力。2011年世界経済フォーラム Young Global Leadersに選出。株式会社LIFULL社外取締役。5児(娘3人息子2人)の父。
楽天グループでは、各事業部でAIエージェントの開発と活用が進められているが、どのような仕組みを構築しているのだろうか。飯田氏が質問すると、小林氏は「コンペティションや事例共有会など、AIエージェントに関する成果や取り組みを発表する機会を設けています」と答えた。
こまめに事例を共有することで、AI活用を「なんとなくやる」ではなく「やらざるをえない」という雰囲気が会社全体に生まれる。そういう文化が浸透すると、コーディング知識がない社員でもAIチームのサポートを受けながら業務改善ツールを自作するようになり、それが他部門へと横展開されていくというサイクルが回っていくのだという。
「変革リーダーをつくれ!」 コカ・コーラ ボトラーズジャパン独自の企業文化とは
小林氏の話を受けて、東氏はコカ・コーラ ボトラーズジャパンを「真逆の組織風土」だと述べた。
東氏は、「当社は会社名にコカ・コーラが入っていて外資系企業だと思われることが多いが、中身はとてもドメスティックな製造・物流企業」だと説明する。かつ、一般的な製造業とは異なり、マーケティングや新規開発といったイノベーティブな機能は日本コカ・コーラ社の役割であるため、品質や期間が決められた商品の製造・配送・販売が同社の主なミッションなのだという。
東 由紀(ひがし ゆき)氏
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 執行役員 CHRO 兼 人事総務本部長
金融機関でセールスやマーケティングの業務に従事した後、2013年に人事へとキャリアチェンジ。証券会社でグローバル部門の人材開発、タレントマネジメント、D&Iのジャパンヘッドを務めた。その後、コンサルティングファームの人材開発部長を経て、2020年よりコカ・コーラ ボトラーズジャパンで人材開発部長、社長補佐に従事し、2023年9月より現職。経営戦略を実現する人事戦略をリードする。
「製造ラインの担当者が『炭酸を強くしたほうが美味しいな』と勝手に判断してレシピを変えてはいけませんよね。当社の業務の90%は、決まった手順を確実に遂行する『オペレーショナル・エクセレンス』が求められ、イノベーションはそこまで重視されていませんでした」(東氏)
しかしそのような風土のコカ・コーラ ボトラーズジャパンも、2030年に向けた中期経営計画では、大規模な変革とデジタライゼーションが不可欠と掲げている。確実性が重視される組織の中で、いかにして変化を主導するリーダーを見出し、育成するのか。
東氏が6年前に入社した直後に社長から受けたミッションは、まさに「変革リーダーをつくれ」であった。

