なぜLPIC取得を勧めるのか
LPICの取得には、それなりの時間やコスト、努力が必要です。それでも、私は皆さんにLPICの取得をお勧めします。勤めている会社でも、何を学べば分からずに困っている若手にはLPICの取得を勧めています。それは、LPIC取得には以下のようなメリットがあるからです。
学習によるLinux技術の習得
まず、何より自分自身の財産になります。今すぐ業務で使わないとしても、役に立つシーンが来る可能性は少なくありません。スマートフォンで使われているAndroidも、LinuxがベースのOSです。
以前は基盤(OS)の担当、アプリケーションの担当というように、ITエンジニアの仕事は分担されていました。しかし、ITの変化スピードが非常に速くなっている昨今、基盤からアプリケーションまで全て分かる人が求められるようになっています。これからは基盤を担当していた人だけでなく、アプリケーション開発を担当してきた人にもLinuxの知識が求められるでしょう。また、Linuxの基礎知識があることで、アプリケーションの開発効率が高まるだろうと推察します。
Linuxができる人(興味がある人)だと示せる
Linuxの知識や技術を持つ人であることが、第三者からも分かるようになります。また、Linuxに興味がある人だと見られるようになり、「Linuxの仕事があるんだけど誰かいい人いないかな?」と社内で人材を探すことがあれば、その候補に挙がりやすくなるでしょう。
業務に限らず、LinuxやLPICというキーワードで声をかけてもらえるようになり、やりたいことや新しいことへ挑戦できる機会が増えることも期待できます。私は実際にそのような機会が増えることになりました。この記事の寄稿もその一例です。
Linuxの体系的な知識が身に付き、スキルに幅が出る
LPICの取得は、業務などでバリバリとLinuxを使っている人にもお勧めしたいです。実務経験が非常に重要なことはいうまでもありません。普段使っている知識や技術には詳しくて、目をつぶっていても作業ができるような人がいらっしゃるかもしれません。
しかし、業務で使わないことは未経験のままになってしまいます。それでは井の中の蛙になりかねません。普段からLinuxを使いこなしている人にこそ、一度LPICレベル1の出題範囲やテキストの目次を見ていただきたいと思います。出題範囲について全てもれなく説明できそうでしょうか? 下手をすると、見たことも聞いたこともなかった機能や技術が見つかるかもしれません(レベル1の範囲ですら!)。
誤解を恐れずにいえば、LPICに限らず資格取得の最も強力な効果は、その分野の知識を体系的に身に付けられることです。資格を持っていることでできる仕事があるとかは、取得の副産物といってよいと思います。
私は趣味で囲碁を少々やるのですが、上達のためのノウハウに「通信教育のパンフレットを取り寄せて教材の目次を見なさい」というのがありました。学ぶことの全体像をながめ、そこから自分の知らないことやできないことを見つけて学びなさいというわけです。これにより全体として漏れのない知識が身に付きます。
これはLPICや特定の資格取得に限った話ではないでしょう。全体を把握するというのは基本であると同時に、物事の習熟において非常に重要なアプローチだと思います。
資格取得を目指すモチベーションの源は
人は感情で動きます。正しい(といわれる)ことや、他人から見たら羨ましがられるようなことであっても、気持ちが乗らなかったり、自分自身の中で必要性が理解できなかったりすれば、やる気は出ないと思います。無理やり学習して資格を取得したとしても、その資格は本当に見た目だけのものになってしまうでしょう。
資格取得のモチベーションは自分自身に問いかける以外にありません。なぜその資格を取得するのか、自問自答してみてください。
- 会社の方針だから?
- 上司の命令?
- 合格すると報奨金が出る?
とどのつまり何でもいいんですが、その理由に納得しておくことが重要です。
ちなみに私の場合、多くの資格を保有している先輩社員がおり、私も負けないように資格を取得したいと思ったことや、社内で一番にLPICレベル3を取得したいと思ったことがモチベーションになっていました。褒められた動機ではないかもしれませんが、気持ちは他人からは見えないものですから、人に迷惑をかけないのであれば何でもいいでしょう。むしろ、自分自身に正直になったほうが揺るがないと思います。