HRzine

注目の特集・連載

新しいことに取り組むとき・モチベーションを保つために行うマインドセット

  • ブックマーク
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2021/03/16 08:00

 Sansan 社内コーチの三橋です。本連載ではマネジメントに課題を感じているマネージャーや人事の方に向け、私の経験を踏まえて社内コーチの可能性や実務をお伝えしていきます。今回のテーマは「マインドセット」(ある事象に対して心持ちや姿勢を整えること)です。前半は、社内コーチを会社の公式な制度としてもらうまでの私の話を例に、新しいことに取り組むときの自分自身のマインドセットについて解説します。社内に前例がないであろう社内コーチングを始める方にお伝えしたいと思いました。後半は、ワークを1つ紹介しながら、メンバーのモチベーションを保つためのマインドセットに触れます。

物事をゼロから始めるときのマインドセット

 アドラー心理学について書かれている『嫌われる勇気[1]』という本は有名ですね。私は自分の強みと可能性を模索し続ける日々の中で、この本を読み、影響を受けました。そして、周囲に社内でコーチングの概念自体を知っている人が少なかった7年前、私が社内コーチングをゼロから始めるために必要だったことこそ「嫌われる勇気」でした。

 今回は当時の葛藤を少し詳しく振り返ることで、私がどのようにして、そうした「マインドセット」を行えるようになったのかをお伝えしたいと思います。

 当時は今後のキャリアについて模索を重ねていた時期です。自分がどうなりたいかを深く考えるようになったのは、新たなチャンレンジをしたいとSansanの営業として転職したものの、自分の強みを活かしきれず営業としてはプロフェッショナルにはなれないと自覚したことがきっかけでした。

 20代から30代前半は「仕事は選ばずなんでもやる」ことを信条に、分野を限定せず多様な経験を求め、幅広い業務に従事することに何の疑問も違和感も持ちませんでした。前職の人材派遣会社では、業務管理、経営企画、事業戦略、営業に従事しました。現在のSansanでも営業として入社後、経営管理(人事総務法務)、業務企画、オペレーション、情報システムと1つの場所に長い間とどまることなく部署異動し、それぞれの場で業務の効率化や業務改善を行っていました。

 ただ、プロフェッショナルであるメンバーに囲まれ、Sansanが重視している価値の一つである「強みを活かし、成果を出す」ための対話を上司と重ねるうちに、多少の器用さは持ち合わせているものの、「何者でもない(専門技術を持っていない)」自分に焦りと疑問を感じるようになりました。そして、「自分のできることをやって成果を出すのではなく、自分にしかできない領域を見つけ、新たな価値を生み出したい」「何かに特化した業務に就き、そこで専門性を深めて自分の強みとし、社会に貢献していきたい」と強く思うようになっていきました。

 そのための模索をしながら多様な仕事を受ける日々が続く中で、自分にとって大きな出来事が起こります。

 当時の私にとって、同時進行で多様な仕事を受け、スピーディーに対応することは得意なことであり、自分の強みでもあると考えていました。もちろん、さまざまな部署に関わり、人の期待に応え、称賛・評価されるのは気持ちの良いことです。ただ、人の期待に依存して自分の主体的な判断をおろそかにすると、仕事のコントロールを失い自分を苦しめます。

 ある日、ついに自分のキャパシティを超えました。大きなミスを起こしてしまったのです。

 それは期待されたことに精一杯応えたいという思いが、周囲の誰も幸せにしていないという事実に直面した出来事でもあり、ひどく落ち込みました。しかし、ある気づきに至るきっかけにもなりました。

 その頃読んでいた本が、冒頭で触れた『嫌われる勇気』で、その中の「課題の分離」についての次の一節が心に刺さりました。

 自らの生について、あなたにできることは「自分の信じる最善の道を選ぶこと」、それだけです。一方で、その選択について他者がどのような評価を下すのか。これは他者の課題であって、あなたにはどうにもできないことです。

 さらに、次のようにマツダの戦略を書いたWeb記事[2]とも出会いました。

そこで選んだ戦略は、BMWが1970年代に取った戦略と同様な、ターゲットを絞り込む「シェア2%戦略」である。
つまり、多くの人に支持してもらう必要はまったくなく、世界中の2%の人から強く支持されるブランドになろうという戦略だ。個性をはっきりさせて、数は少ないが「私はマツダが一番好き」という人を作り、その人々を満足させるブランドにしていこう、ということだ。

 これらを読んだとき、縛られていた見えない鎖から解き放たれたような気がしました。そして、次のようにマインドセットしました。

 「100人の社員がいたら、そのうちの5人の人に最高の価値を提供しよう。それ以外の人から何を言われどう評価されようと、気にしない」

 個人のマインドセットを整えることは、変化の大きい外部環境や不安の多い未知の状況からの影響を受けにくくしますし、たとえ影響を受けても立ち戻れる軸を作ります。私の場合、社内の誰もやったことがない社内コーチングに挑戦するにあたり、このマインドセットがあったことで、たとえ社内コーチングについてのネガティブな評価があったとしても(実際にありました)、気に止めることなく歩みを進め、継続することができました。

 さらに、新たな挑戦をする上で、このマインドセットとともにポイントになったものがあります。「枠組みを越える思考と行動」です。

[1]: 岸見一郎、古賀史健著『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社刊)

[2]: 山崎明「マツダの好調を支える「2%戦略」その秘密」(現代ビジネス)

※印刷用ページ表示機能はメンバーのみが利用可能です(登録無料)。

  • ブックマーク
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

著者プロフィール

  • 三橋 新(ミツハシ アラタ)

    Sansan株式会社 人事部 社内コーチ。2009年に29番目の社員としてSansanへ参加し、営業、経営管理(人事/総務/法務)、情報システムなど企業のアーリーステージにおける役割を担ってきた。200人を超える社員へのコーチング実践を通して、社内コーチという役割をゼロから立ち上げ制度化し今に至る。
    ・米国CTI認定 Certified Professional Co-Active Coach(CPCC) 取得
    ・米国CRR認定 Organization & Relationship Systems Certified Coach(ORSCC) 取得

バックナンバー

連載:社内コーチ スタートガイド
HRzine
2021/03/16 08:00 /article/detail/2956
All contents copyright © 2020-2021 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.0