Works Human Intelligence(ワークスHI)は、統合人事システム「COMPANY」のユーザー65法人を対象にLGBTQに関する意識・取り組み調査を実施し、結果を発表した。調査期間は5月14日~6月4日。
性の多様性に関する取り組み状況について質問したところ、全社的に行っている施策では「差別禁止の明文化」を行っている法人が40.0%と最も多く、次いで「戸籍/法律上の氏名と異なる通称名の使用」「経営層の支援宣言」が29.2%となった。一部取り組み中や準備中、検討中を含めると、「戸籍/法律上の氏名と異なる通称名の使用」(55.4%)が最も多く、「差別禁止の明文化」(52.3%)「研修、eラーニング」(50.7%)も過半数を占めた。
すべての施策に対して「検討していない」と回答した割合は、29.2%だった。したがって、70.8%はいずれかの施策を少なくとも検討中であることが分かった。
取り組み推進の後押しになった要因は、「経営層の支援宣言」が最も多く48.6%、次いで「自治体のパートナーシップ制度の導入」が17.1%だった。「その他」の回答には、当事者からの相談・カミングアウトがきっかけとなったケースや、社内調査・公募により取り組みが実施されたケースも複数見られた。
取り組みを推進するうえでの懸念については、「優先順位が高くない」が63.2%と最も多い結果となった。一方で、「経営層の理解が得られない」「必要性がない」といった回答はなかった。
オープンにしている当事者の有無については、半数近くの43.1%が「わからない」と回答し、26.2%が「社内にいる」と回答した。
従業員の性の多様性に対する取り組み・施策を行っているかという先の設問とかけあわせたところ、「社内にいる」と回答した法人のほうが「どちらにもいない」と回答した法人よりも、全体的に取り組みが進んでいることが分かった。当事者が可視化されているほうが施策の優先度を上げて実施できる、もしくは施策が進んでいるほうが当事者がオープンにしやすい傾向にあることがうかがえる。
LGBTQ当事者からの相談については、「相談を受けたことはない」が66.2%を占めた一方で、回答者の4分1である24.6%が「トイレや更衣室の利用」について相談を受けたことがあると回答した。相談に対しては、「多目的トイレを導入した」「本人の意見を尊重してケースバイケースで対応した」などの声があった。
本人がLGBTQであることを推測しうる個人情報の社内公開については、「情報公開していない」が過半数の53.8%を占めた。一方で、35.4%が「性別を上司が閲覧可能」、29.2%が「家族情報を上司が閲覧可能」と回答しており、仕組み上、本人がLGBTQ当事者であることが意図せず他人に知られてしまう懸念は少なからずあると考えられる。
主にトランスジェンダー従業員の情報取り扱いについて質問したところ、戸籍上・法律上の性とは異なる「就業上の性別」を人事部門で収集・管理している割合は、「人事システムで管理」が17.6%、「紙資料や個別ファイルで管理」が2.0%、「対象者はいるが把握していない」が7.8%だった。一方、本名と異なる「通称名」は、「人事システムで管理」が38.6%、「紙資料や個別ファイルで管理」が6.8%という結果だった。通称名の利用は、結婚などによる改姓後に旧姓を通称名として利用したいというニーズもあるため、就業上の性別と比較して情報管理の方法が整っている傾向にあると考えられる。
「就業上の性別」の収集・管理については、本人が自認する性別を正しく登録できるというメリットがある一方で、税・社会保険等の人事業務には利用されない情報であるため、そもそも人事情報として収集・管理すべきなのかという意見もあった。従業員の個人情報をどこまで収集すべきか、議論の余地があるといえる。