パーソル総合研究所は、人事評価・目標管理に関する調査を実施し、結果を発表した。同調査は、コロナ禍によるテレワーク普及を背景に、従業員の目標管理の重要性が増す中、人事評価・目標管理に関する実態や課題などを定量化し、経営・人事に資する提言を行うことを目的に実施した。調査時期は、企業調査が2021年3月11日〜15日、従業員調査が2021年5月6日〜11日。
自社の評価制度に対して不満を抱いている人は38.3%となった。さらに、評価のプロセスに不満がある人は36.3%、評価の結果に不満がある人は33.2%だった。
自社の目標管理制度に関してコロナ後に強まった不満を尋ねたところ、1位は「部署によって目標の難易度が違う」で35.6%、2位は「同じポジションでも人によって目標の難易度が違う」で34.8%となり、コロナ禍による事業への影響の強弱や、テレワークの普及によって、組織内部で目標の水準を合わせることが難しくなっていると推察される。
自社の目標管理制度に関する企業側の課題について尋ねたところ、「モチベーションを引き出せていない」「成長・能力開発につながっていない」「成果に報いる処遇が実現できていない」などの回答が過半数となった。
評価結果に関する企業側の課題について尋ねたところ、1位は「評価結果に差がつかず、中心に偏る」で52.1%だった。
低評価者への対応について尋ねたところ、どのような処遇変更であれ、実施されている割合は低いという実態が定量化された。降給・降職・降格はいずれも2%台となった。
何かしらの目標管理を行っている割合は53.8%だった。MBO(Management by Objectives:個人目標を各自が設定し、その達成度合いで評価する制度)による目標管理は34.6%、360度評価を行っている割合は20.9%となった。
目標管理と評価プロセスにおいて、上司による中間面談やフィードバックは多くの会社で制度化されているが、そのうち、制度通りに実施できている上司は3割前後だった。制度化されているにもかかわらず「非実施」の上司は2割強おり、制度の形骸化が見られる。
同研究所の上席主任研究員 小林祐児氏は、同調査の結果を総括して次のように述べている。
「今回の調査によって、目標管理プロセスが成長につながるかどうかには、従業員が自社の人事評価に対して感じている、「暗黙の評価観」の影響が確認できた。
暗黙の評価観とは造語だが、人事評価そのものに対するマインドセットや考え方を意味する。人事評価について『自分の課題を明らかにするためのもの』『成長できているか確認するためのもの』などのポジティブな評価観を持っている従業員は、評価の積極的活用や、フィードバックを求める行動をとっていた。逆に、『無理にでも仕事をさせるために人事評価がある』といったネガティブな評価観は、『目標にないことをやらない』といった行動に結びついていた。そうした評価観は、上司の傾聴行動(話を聞く姿勢)や、メンバー同士が助け合う組織風土によって影響されていることも重回帰分析で確認できた。
企業は評価の公平性を担保しようと、評価プロセスや等級要件などを精緻化しようとすることが多いが、そもそも従業員から自社の評価制度や評価結果がどのように見られているのかなどもしっかり意識し、ポジティブな暗黙の評価観を醸成すべきだ」(小林氏)