建築物の構造設計を主力とするさくら構造は、「上司選択制度」を取り入れた人事制度を採用した。建築業界の人材不足は深刻で、有効求人倍率は7倍前後で推移しているほど。さくら構造はそんな中でも部下が上司を選べるようにして、離職率の低下と上司と部下のモチベーション向上を図っている。構造設計は建築業界の中でも特定の領域だが、個性や教え方はさまざま。部下から自身の成長しやすい上司を選ぶことで、部下のみならず上司のパフォーマンス向上をも狙えるとする。
人は、結婚や出産、衰えや病気など、ライフステージやライフイベントによって仕事との向き合い方が変わる。通常の人事制度と違い、自身で上司や設計室を選べることで、その時々に合った適切な成長ができると考え、上司選択制度が生まれたという。
上司選択制度とは、自身が所属する設計室長、上司を自らで選択できる制度。部下が自分に合った上司を選ぶことで人と人とのミスマッチングを減らせる。
部下にとっては、自分を育ててくれる上司を選べるため、キャリアアップに対して積極的になれる。また、成果が上がることが期待でき、上がらなくても自分事になる。
上司にとっては、上司の資質として必要な育てる力を向上させ、できなければ自分の班が成り立たなくなると考えるようになる。また、自分を選んでくれる部下のため、円滑なコミュニケーションがとれる。
【同社の従業員の反応】
- 導入前「一般社員は極めて好意的に捉えていましたが、設計室長の中には自分の設計室が解散になるかもしれないという不安もありました」
- 導入後「異動希望が出せる制度が整っていることで従業員満足度も向上しています。ピンポイントで希望したい上司がいる社員もおり、制度化してからは10名が利用しています」