ワークポートは全国のビジネスパーソンに、職場でパワハラがどの程度蔓延しているのか、職場のパワハラ防止策は進んでいるのかなど、職場の「パワーハラスメント」の実態についてアンケート調査を実施した。
調査の概要と結果は以下のとおり。
- 調査内容:職場の「パワーハラスメント」の実態について
- 調査対象者:同社を利用している全国のビジネスパーソン(20代~40代・男女)
- 有効回答:449人
- 調査期間:2022年3月3日~7日
【パワハラの実態】7割弱の人がパワハラ被害者
調査対象者449人に、現在の勤務先(離職中の人は直近の勤務先)でパワハラを受けたことがあるか尋ねたところ、66.6%が「受けたことがある」と回答した。職場においてのパワハラは、未だ根絶していないことが読み取れる結果となった。
【パワハラの対処法】1位「転職・退職」2位「誰にも相談せずに我慢」
現在の勤務先(離職中の人は直近の勤務先)でパワハラを受けたと回答した299人に、パワハラを受けたときにどうしたか尋ねたところ、72.9%が「転職・退職を考えた(転職・退職をした)」と回答。続いては「誰にも相談せず我慢した」(36.8%)という回答も多く、職場内の解決が望めず泣き寝入りする人が多いことが分かった。「上司に相談」が20.1%、「職場の相談窓口(部署)に相談」が13.0%という結果からも、社内を頼れる人が少ないことがうかがえるという。
【パワハラの被害例】1位は暴言・侮辱など言葉による「精神的な攻撃」
現在の勤務先(離職中の人は直近の勤務先)でパワハラを受けたと回答した299人に、具体的にどのようなパワハラを受けたか尋ねたところ、最も多かったのが「暴言・侮辱(言葉の攻撃)」で、74.2%におよんだ。ただ、同じ「攻撃」的行為であっても、「暴行、傷害(身体的な攻撃)」は8.0%にとどまった。
また、「過剰な業務・過酷な業務の強制」(45.8%)、「能力を過小評価する・成果を認めない」(45.2%)も上位に挙がった。加えて、過度に業務をさせる一方で、「業務をさせない・あたえない」(22.4%)も少なくない結果となった。
ほかにも、「無視・仲間はずし」(27.8%)や、個人情報を暴露されたり、私生活に過度に干渉されたりするなど「プライベートへの介入」(26.1%)、有給取得の拒否、福利厚生の使用拒否など、「労働者の権利侵害」(22.7%)に苦しむ人も、それぞれ全体の20%を超える結果となった。
身体的な攻撃のように見えやすいものではなく、目に見えにくいパワハラ行為が横行している傾向が分かる。
【パワハラの実態】受けたことは無くとも、見聞きしたことがある人は42.0%
現在の勤務先(離職中の人は直近の勤務先)でパワハラを受けていないと回答した150人に、職場でパワハラを見たり、聞いたりしたことがあるか尋ねたところ、42.0%の人が「見聞きしたことがある」と回答した。パワハラを受けた人と合わせると、約8割の人が職場で「パワハラがあった」と回答したことになる。
【職場のパワハラ防止策】対策を実施している会社はたった3割
調査対象者全員に、現在の勤務先(離職中の人は直近の勤務先)でパワハラ防止に関する取り組みが行われているか尋ねたところ、「取り組んでいる」と回答した人は35.0%であった。「パワハラ防止関連法」の施行から約2年が経過したものの、会社の防止対策はあまり進んでいないことが分かる。
また、「取り組んでいる」と回答した人に具体的な取り組みの内容を聞いたところ、定期的な「パワハラ防止に関する研修や勉強会」を実施しているという回答が大多数を占めた。
人事部や総務部などが主体となって社内で実施する会社もあれば、外部機関の研修プログラムを導入している会社もあるという。施策としては、研修の対象者を管理職に限定したり、e-ラーニングで受けられるなどの工夫をする企業も多かったほか、相談窓口の設置や、匿名通報制度の実施など、被害者が声を上げられる仕組みづくりをしている会社も目立った。相談窓口は社内だけでなく、カウンセラーとの面談や外部の相談窓口の設置など、第三者機関を活用した取り組みを行う会社もあるようだ。
加えて、パワハラが起こってしまった際には、パワハラを行った社員に対して担当部署が一対一で指導を行ったり、部署を異動させるなどの対策を行う会社も見受けられたという。
【職場のパワハラ防止策の満足度】6割以上が不満足
現在の勤務先(離職中の人は直近の勤務先)でパワハラ防止に「取り組んでいる」と回答した157人に、取り組みに満足しているか質問したところ、「まったく満足していない」と答えた人が25.5%、「あまり満足していない」と答えた人が35.7%となり、61.2%が不満を抱えていると分かった。
満足していない理由を尋ねたところ、「通報後の措置が不十分だった」(20代・男性・教育)など、対策の実効性の無さを嘆く意見が大半を占めた。また、「誰が何を相談したかが噂になっていた」(40代・女性・システムエンジニア)など、相談できたとしても匿名性が保たれていない会社もあったという。加えて、「パワハラしている本人が教育を実施している」(40代・男性・製造)など、対策が意味を成さないことを指摘する人もいた。
一方、満足している人に理由を尋ねたところ、ほとんどの人が「効果的にパワハラを抑止しているから」(30代・男性・製造)など、パワハラが起きていないことを挙げていた。対策していたとしても、ほとんどの会社で形骸化していて根本的なパワハラ防止につながっておらず、社員が不満を抱える結果となった。
【パワハラ防止策の希望】立場への忖度なく処罰の厳格化や明確化を希望
現在の勤務先(離職中の人は直近の勤務先)でパワハラ防止に「取り組んでいない」と回答した292人に、どんな対策をしてほしいか希望を尋ねたところ、相談窓口の設置や、パワハラが起こりにくい風通しの良い職場環境づくりなどの意見が挙がった一方、パワハラに対する罰則の厳格化や明確化、人事異動など、直接的な対策の実施を希望する声が多数挙がった。「当事者だけでなく管理者も責任を負う。当事者が経営者や役員であっても罰則を適用される仕組みや機関がほしい」(男性・40代・営業)など、忖度なしで処罰されるべきだという声も散見され、管理職や一定の役職についている人がパワハラの加害者となるケースが多いことが、防止策を進める上での課題となっていることも垣間見られた。
「パワハラ防止策」の希望例
- 「部下が上司を評価する制度」(40代・女性・事務)
- 「事実調査をきちんと行ってほしい」(40代・女性・クリエイター)
- 「パワハラになる行為の事例を定期的に周知」(男性・30代・事務)など
【パワハラ防止措置の期待度】7割以上が期待せず
2022年4月から、中小企業にもパワハラ防止措置が義務づけられる。そこで調査対象者全員に、パワハラ防止措置義務化により、どの程度パワハラが改善されると思うか質問したところ、「まったく改善されないと思う」と答えた人が25.2%、「あまり改善されないと思う」と答えた人が49.9%となり、75.1%が期待していないことが分かった。
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