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イベントレポート《人材育成》| 管理職育成から始まる組織づくり

JT・バンダイナムコが取り組む「管理職育成」 変化に適応できる組織作りはここから

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 先行きが不透明な今の時代において、変化に適応できる組織を作るための要となるのが「管理職」である。管理職が経営方針や理念を理解し、各現場の行動に落とし込めるかどうかで組織全体のパフォーマンスが変わるからだ。それだけ今は、管理職に求められる役割が以前と比べて大きく変化している。とはいえ日本企業の実態としては、管理職に課題や問題意識を抱えている企業も多いのではないだろうか。そこで本記事では、実際に管理職の育成を進め、実行力の高い組織作りを行っている日本たばこ産業株式会社と、株式会社バンダイナムコエンターテインメントの2社の事例を紹介する。なお、本記事はイベント「HR Transformation Summit 2022」(主催 株式会社リンクアンドモチベーション)のセッション「変化に適応する組織づくりの秘訣〜『管理職育成』を起点とした取り組みとは〜」の模様をレポートするものである。

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パネリスト

山浦 淳一

山浦 淳一(やまうら じゅんいち)氏
日本たばこ産業株式会社 人事部長
JT⼊社後、飲料事業に従事したのち、⾷品事業領域において複数の買収案件プロジェクトに参画し、M&A実務とその後の事業のビジネスプロセスの統合を担当。その後、本社経営企画部において中⻑期戦略プロジェクトにリードとして参画し、現新規事業開発部署の前⾝を⽴ち上げる。2018年からはグループ会社である富⼠⾷品⼯業へ取締役執⾏役員企画管理担当として赴任。2022年から現職において、⼈事を経営や事業戦略とより密接に紐づけ、⼈事という観点からJTグループの経営戦略の実現を担う。

町田 結城

町田 結城(まちだ ゆうき)氏
株式会社バンダイナムコエンターテインメント 人事部 ゼネラルマネージャー
1999年ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)⼊社。アミューズメント施設勤務を経て、2000年より現在まで20年以上にわたり⼈事領域に従事。事業環境が⼤きく変化し続けるエンターテインメント業界の中で、経営統合や社名変更などの⾃社の変化に対応しながら、経営戦略実現のための⼈事戦略策定、実⾏、浸透を担う。採⽤から育成、配置、評価、働き⽅、労務管理に⾄る⼀連の⼈事施策を「⾃⾝の仕事、キャリア、仲間に誇りを持てる⼈材が集い、社員がやりがいをもって⽣き⽣きと働ける会社に」という思いのもと⼿掛けている。2021年には国家資格キャリアコンサルタントを取得し、社員個⼈のキャリアにも寄り添うほか、2022年からは株式会社ジェイ・ブロード⾮常勤取締役も務める。

モデレーター

宮澤 優里

宮澤 優里(みやざわ ゆり)氏
株式会社リンクアンドモチベーション MMEカンパニー カンパニー長
2008年、株式会社リンクアンドモチベーション⼊社。⼀貫して⼤⼿企業向けの組織⼈事コンサルティング業務に従事。⼤⼿企業向けのビジョン浸透・⾵⼟変⾰・育成に携わる《エンターテインメント業界(戦略⼈事構築・育成プロジェクト)、航空業界(理念浸透プロジェクト/育成体系構築プロジェクト)、⼤⼿飲料メーカー(育成体系構築/⼥性活躍推進プロジェクト)》。コンサルティング部隊のマネジャーを経て、現在、東⽇本⼤⼿企業向けの⾵⼟変⾰・⼈材育成領域の責任者を務める。

日本たばこ産業が取り組んだ3つの施策と工夫点

 まずは、日本たばこ産業(以下、JTグループ)の管理職育成における施策から紹介していこう。

 昨今、経営を取り巻く環境の変化や働き方の多様化に伴い、企業は顧客や個人から“選ばれる”ことへの難易度が高まっている。ことJTグループにおいても、顧客や個人から選ばれる企業を目指し、「個の自立・自律をより一層求めつつ、多様化およびTry&Challengeの風土を醸成しながら企業価値を向上させることが重要だ」と同社 人事部長の山浦淳一氏は強調する。

 JTグループでは2018年より「採用」「配置(キャリア)」「成長支援」「評価」「報酬」「労務」「代謝」の7つの人材マネジメントを総点検し、さまざまな変革施策を実施。「これまでの同質性を求心力として価値を出すアプローチから、同質性を核に持ちつつも、多様な個性を尊重する組織へ」と本格的に動き出した。その複雑で高度な組織をリードするのがマネジメント(管理職)の役割である。

 JTグループでは、マネジメント職の職務等級制度をベースに、次の3つの施策を展開している。

①マネジメント成長支援体系の刷新

 自立・自律的人材の創出を目的とし、次図のように、5つの成長ステージで成長サイクルを促す仕組みを設定。マネジメント職はステージ4・5に該当する。各ステージで求められる「役割」を理解した上で、スキルアップを中心とした「能力開発」に加え、定期的なサーベイを取り入れながら「内省」を促す。さらに「役割理解→能力開発→内省」のサイクルをOJTとリンクさせていくのがポイントである。

5つの成長ステージで成長サイクルを促す仕組みを設定
5つの成長ステージで成長サイクルを促す仕組みを設定
[画像クリックで拡大表示]

 ステージごとの役割理解、能力開発、内省のプログラムは次図のとおりだ。

ステージごとの役割理解、能力開発、内省のプログラム
ステージごとの役割理解、能力開発、内省のプログラム
[画像クリックで拡大表示]

②組織サーベイ・エンゲージメント

 2019年より「全社統一サーベイ」に加えて、新たに「インスタントサーベイ」を導入し、各組織のニーズに基づいて、組織の状態を適宜把握できるようにした。また、グループ内に組織開発のコンサルティングを担う専門チームを配置し、組織課題を解決・変革をサポートする仕組みを整えた。

「全社統一サーベイ」と「インスタントサーベイ」
「全社統一サーベイ」と「インスタントサーベイ」
[画像クリックで拡大表示]

③Job Matching

 マネジメントとプロジェクトリーダーを対象に、会社主導のキャリア形成を廃止し、一人ひとりが自らのキャリアを選べる取り組みを実施。ジョブディスクリプション(職務内容)やグレードを明示した上で募集を行う。

Job Matching
Job Matching
[画像クリックで拡大表示]

 これら3つの施策を推進する上で、課題となったのが管理職のマインドセットだったという。「同質性を武器とするマネジメントから、個を活かすマネジメントへの変革を進めるにあたっては、マネジメント層の意識を大きく変える必要があった。そこは、時間をかけて地道に丁寧なコミュニケーションを取ることが大事だと考えている」と山浦氏。

 一方、成長支援プログラムの中で、工夫した点として挙げたのが「内省」行為の習慣化だ。自分に求められている役割をきちんと理解した上で、この経験から自分は何を学んだのかを振り返り、次に活かせるようにした。

 その結果、マネジメントの意識が向上し、多様性を受け入れられる組織へと変わりつつあるという。「男女を問わない育児休暇の取得、リモートワークやフレックスタイムの活用は、この数年でかなり浸透している。また、コロナ禍により業務のオンライン化・デジタル化が進む中、新たなマネジメントスタイルも創意工夫しながら積極的に取り組んでいる。まだまだ道半ばではあるが、マネジメントが主体となって自立・自律を志向していく土台ができつつある」とした。

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この記事の著者

山田 優子(ヤマダ ユウコ)

神奈川出身。新卒で百貨店内の旅行会社に就職。その後、大阪に拠点を移しさまざまな業界・職種を経験してきたが、プロジェクトベースの働き方に魅力を感じて2018年にフリーライターに転向。現在はビジネス系取材記事制作を軸に活動しながら、チームで商品企画・開発にも挑戦中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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