HR-KPIを「段階」で整理する
指標の開示は、最初から全てを目指すのではなく、無理せず段階的に行うべきです。そして、それぞれの指標の開示も、全ステークホルダーを対象とするのか、特定のステークホルダーを対象にするのか、考えることもあり得ます。
では、どのような「段階」があるのか。次に示すのはその一例です。
- 1. 基本KPI
- 全ステークホルダーが共通して価値と感じる取り組みについて、その成果を評価してもらうための指標。外部に開示する。
- 2. 発展的KPI
- 特定のステークホルダーが価値と感じる取り組みについて、その成果を評価してもらうための指標。外部に開示する。
- 3. PI(Performance Indicator)
- 自社の人材課題(つまり改善が求められるもの)について、進捗を把握するための指標。外部に開示しない。
これらのうち、今回は基本KPIの切り口を紹介していきます。
①期待する人材を採用できているか(期待採用率など)
自社の経営戦略を踏まえた上で、期待するスペックを持つ人材をどれだけ採用できたかを示すKPIです。計画した人数を採用できればそれでよい、というものではありませんよね。数だけ追ってそれでよしとすると、実態を見誤ります。当該KPIをモニタリングしないと、採用力の向上は見込めません。
またこのKPIは、人事部だけで運用することは不可能であり、事業部との連携が必須です。まずは、各事業部の「戦略」に基づいた、採用したい人物像の明確化がなされ、それを指標化します。そして、事業部との連携に基づいた、採用後の「評価スキーム」の構築も必須となるでしょう。
ちなみに、成果指標である「期待採用率」につながる中間指標[1]として、就職人気企業ランキングや、業務内容理解率、内定辞退率なども時折見ます。パフォーマンス管理のために有効ではありますが、必ずしも開示しなくてよいかと思います。
②採用した人材が定着しているか(人材定着率など)
採用した人がどれだけ定着しているかを示すKPIです。これは多くの会社がすでに扱っているデータでしょう。しかし、KPI開示の動きは出てきているものの、当該KPIに触れているケースはあまり見かけない気がします。組織の健全性をダイレクトに表す、このようなKPIこそ積極的に開示すべきだとも考えます。
定着率が低く出たときの要因を分析する切り口としては、「カルチャーとのアンマッチ」「オンボーディングの失敗」「マネジメントの不備」「アサインメントのズレ」など多岐にわたります。ですので、本当にPDCAサイクルを回そうとするならば、それぞれの領域において、そのパフォーマンスを測定する中間指標を設定しておく必要があります。
「エンゲージメント」や、パルスサーベイによる「健康指数」「モチベーションスコア」など、よく使われるKPIはありますが、これらを運用しようとすると結局、同じように上記各領域における中間指標が必要になります。