デロイト トーマツ コンサルティングは、「デジタル人材育成に関する実態調査2023~人的資本経営時代に取り組むべきリスキリングとは~」の結果を発表した。
デジタル人材育成の実施率は一般企業とDX先行企業で約40%の差
企業に対する調査では、育成・研修施策を推進している実施率は一般企業で46%、DX先行企業で87%という結果になった。育成・研修の前提となる「経営ビジョン」は一般企業(26%)・DX先行企業(66%)、「人材ニーズの定義」は一般企業(26%)・DX先行企業(50%)、「育成計画」は一般企業(25%)・DX先行企業(68%)、学びを活かす「実践機会の提供」は一般企業(31%)・DX先行企業(71%)と、いずれも一般企業の実施率がDX先行企業よりも大きく下回っていた。一般企業では、eラーニングの提供など、比較的始めやすい「学ぶ場」の提供から進めている傾向がうかがえる。
一方で、DX先行企業でも、学びを促進する「コミュニケーション」は18%、評価や報酬にひもづく「人事制度」の整備は8%にとどまり、学ぶ「動機づけ」につながる施策まで着手できていない企業が大半であることが分かる。
DX先行企業のデジタル人材育成の課題は「実践機会」が最多
デジタル人材育成施策の課題を感じている項目について、一般企業は「経営ビジョン」(45%)、「育成計画」(57%)など、「育成・研修」より手前の施策に課題を感じている割合が高かった。
DX先行企業は、「実践機会の提供」(53%)や「人事制度」(47%)といった「育成・研修」後の施策について課題認識が高くなっている。とくに、「実践機会の提供」は、DX先行企業の実施率は71%と着手している割合が高い一方で、課題を抱えている企業が多いことが分かる。
また、一般企業、DX先行企業ともに、「育成・研修」を実施している企業では、制度を導入しても、まだ改善の余地があると考えている割合が高い。
9割以上の企業がDXを検討
全体の9割以上の企業がDXを検討・推進しているが、多くは業務効率化にとどまっていることが分かった。一方で、DX先行企業は、「新規製品・サービスの創出」(92%)、「既存製品・サービスの付加価値化」(76%)といった付加価値の向上が目的である。さらには「企業文化・組織マインドの根本的な変革」といった従業員を対象とした変革にも76%が取り組んでおり、一般企業との差異が表れていた。一般企業では、よりデジタル人材の必要性が読み取れる。
潜在デジタル人材は非デジタル人材のうち推計36%
個人に対する調査は、エンジニアやデザイナー、ビジネスプランナーなど、デジタルに関する14職種の経験がある人を「デジタル人材」、当てはまらない人を「非デジタル人材」と定義し、分析した。その結果、日本の就業人口約3000万人のうち、デジタル人材は254万人と推計される。
次に、非デジタル人材のうち、「デジタル領域関与意向」と、同社独自のデジタルリテラシーアセスメントにおける「マインドスタンス」レベルの2軸から9つに分類し、両軸が「中」レベル以上の層を、デジタル人材になりえる「潜在デジタル人材」と定義し、分析しました。その結果、潜在デジタル人材は、非デジタル人材の36%と推計された。
個人のリスキリングへの意向はデジタル人材と非デジタル人材で大きな差
デジタル技術の発展に伴い、必要となるスキルを個人が習得する意味での「リスキリング」意向者は、デジタル人材では69%となっている一方で、非デジタル人材では32%にとどまった。中でも、非デジタル人材の半数近くがデジタル分野のリスキリングに関して課題を感じていない状況であることが分かる。
また、リスキリング意向者における課題は、必要なスキルや学習方法の明確化、トレーニング機会や時間確保、キャリアに活かせる機会不足が上位となっており、デジタル人材を拡大するうえでは、学びに対する個人のレディネス(準備)や動機づけを促進する必要があると考えられる。
なお、同調査の概要は次のとおり。
企業 | 個人 | |
---|---|---|
調査形式 | Webアンケート方式 | Webアンケート方式 |
有効回答数 | 252社(DX先行企業49社[1]、一般企業203社) | 11万9326名(スクリーニング調査)、6387名(本調査)[2] |
調査時期 | 2023年5月8日~5月26日 | 2023年5月12日~5月14日 |
注
[1]: DX銘柄/DX認定企業を「DX先行企業」として分類
[2]: 全国の20代~50代男女の勤労者。高等学校卒業に加え専門的な職業訓練修了以上を修了。会社役員、会社員、契約社員・嘱託社員、自営業・フリーランスに該当する者。
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