なぜ理想の組織文化を醸成できないのか
次のようなお悩みを、非常に多くの会社が抱えています。
- 社内のコミュニケーション量が少ない
- 部門間がうまく連携していない
- 情報や意見が共有されない
- 社内からイノベーションが起きない
読者である人事や経営企画の皆さんの中にも、頭を悩ませている方がいらっしゃることでしょう。
おそらく、皆さんが理想としているのは、「役職や部門に関係なく、共通の目標に向けて一丸となって、情報を自由に共有し、お互いがお互いがリスペクトして協力し合い、それによってたくさんのアイデアが生み出される」、そんな組織です。
そして、理想の組織文化を形成するために、社内イントラネットを充実させてみたり、社内イベントを開催してみたり、フリーアドレスを導入してみたりと、さまざまな取り組みをされていると思います。
「でも、いまいち効果が出ているように思えない」
そんなふうに感じている方が多いかもしれません。あなたの組織はどうでしょうか?
どの取り組みも理想実現への一助になるものの、このような施策だけでは期待どおりの効果が得られないことが往々にしてあります。
こんなにも多くの手を打っているのに、なぜうまくいかないのでしょうか。何か、見過ごしているポイントがあるのでしょうか。
機長に意見するよりも死ぬことを選んだ副操縦士
ここで、あるエピソードを紹介します。
1978年のある飛行機墜落事故の後に、フライトシミュレーターを使った研究調査が実施されました。その研究では、機長はあらかじめ間違った判断を下すように指示されており、その指示に対してクルーが機長に進言するまでの時間が計測されました。その実験において、クルーの反応を観察していた心理学者は、「副操縦士らは機長に意見するより、死ぬことを選んだ」と言ったそうです。
これは、マシュー・サイド著の『多様性の科学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)の中で紹介されているエピソードです。著者は、このエピソードについて「米国運輸安全委員会によれば、30件以上の墜落事故が、副操縦士ら乗組員が機長に進言できずにいたことに起因している」と記しています。
「乗客の命を第一に守る」という目標は機長と共通しているのにもかかわらず、多くの副操縦士や乗組員が機長に意見しなかったのは、何が要因だと、あなたは考えますか?