田中 弦(たなか ゆづる)氏
Unipos株式会社 代表取締役社長CEO
1999年ソフトバンク株式会社 インターネット部門一期生としてネット産業黎明期を経験。経営コンサルティングファーム・コーポレイトディレクション(CDI)にて事業立ち上げ支援や戦略策定に関わる。その後ネットエイジグループ(現ユナイテッド社)執行役員。2005年Fringe81株式会社を創業。独立後2017年東証マザーズ上場。同年Uniposのサービス開始。2021年10月にUnipos株式会社に社名変更し、個人の人的資本を発見し組織的人的資本に変えるUniposの提供を中心に活動。「人的資本経営専門家」として経営戦略と人事戦略を紐づけるための「人的資本経営フレームワーク(田中弦モデル)」の公開人的資本開示を読んで導き出した独自の見解を発信。メディアへの出演多数。『心理的安全性を高める リーダーの声かけベスト100』(ダイヤモンド社)著者。
本記事の各情報は2024年1月17日開催時点のものです。
モデル1~4を紹介している前編もぜひお読みください!
【モデル5】健康経営との組み合わせ
田中氏は、有価証券報告書や統合報告書、海外指数企業など、のべ5000社の人的資本開示をすべて読了した後、各企業を5段階評価で格付けし(詳しくは前編を参照)、人的資本経営のベストプラクティスを9つのモデルに分類した。モデル1からモデル4まで紹介した前編に続き、後編である本稿ではモデル5「健康経営との組み合わせ」から紹介していく。
人的資本経営において、健康経営との組み合わせは、働く人々の能力が最大限に発揮されるよう、集団(環境・土台)に対する投資を行うことを意味する。この事例として田中氏がまず挙げたのが三井化学だ。
「三井化学では、メンタルヘルスの風土(縦軸)と職場のストレス度(横軸)を分析し、職場改善に役立つよう組織の結果を各所属長に説明しています。具体的には、『あなたの部署は、健康総合リスクが高く、風土が悪いので改善が必要です』と部長や事業部長に伝えているということですね。ここで重要なのは、この分析が個人情報と紐づけられているわけではなく、部署が会社全体の平均と比較されていることです。そして、風土が良くストレスが低い職場環境、すなわち図の左上を目指すことは一目瞭然ですね。健康経営と人的資本経営データを統合した分析はとても斬新だと感じました」(田中氏)
次に紹介したのは太陽ホールディングス。同社では、全従業員を対象としたストレスチェックを実施し、36項目中で31項目が全国平均を上回る結果となった。
「こちらはストレスチェックを活用したとても良い事例ですね。もう少し言うと、残りの5項目を課題として開示されるとさらに良いと思います。太陽ホールディングスでは、1人当たりの図書購入費用が24万円、1人当たりの研修費用が41万円となっており、さらに食堂の運営にも力を入れています。人的資本への投資や環境作りにおいて、かなり突出したレベルだと感じました」(田中氏)