パーソル総合研究所は、「転勤に関する定量調査」の結果を発表した。なお、転勤は「国内転勤(転居を伴う異動)」を対象としている。
就活生、社会人の半数が「転勤がある会社の応募、入社は回避する」
転勤がある会社について、就活生の入社意向は「転勤がある会社は受けない」が19.4%、「転勤がある会社にはできれば入社したくない」が31.4%と、合わせて50.8%であった。また、性別で見ると、女子学生の約4分の1が「転勤がある会社は受けない」意向を持つ。
次に、社会人の中途入社意向は「転勤がある会社は受けない」が24.9%、「転勤がある会社にはできれば入社したくない」が24.8%と、合計49.7%になった。性年代別では、どの年代においても、女性は3割以上、男性は2割前後が「転勤がある会社は受けない」と考えていることが分かる。
「転勤」が応募意向に与える影響は、給与や残業時間よりも大きい
転勤回数について、「転勤1〜2回」は「転勤なし」と比べると、応募意向への影響(効用値)が1.0〜1.1と下がる。また、給与を軸にした場合、「現在の給与」(就活生においては希望する業界の平均初任給)と「現在より20%高い給与」では、応募意向への影響に約0.4〜0.8しか差がない。つまり、給与の増額よりも、転勤があるほうが、大きな影響力を持つことが分かる。
「不本意な転勤は受け入れずに退職する」が4割
転勤がある企業に勤める総合職社員において、「どのような条件であっても転勤は受け入れない」が2割となった。さらに、「不本意な転勤を受け入れるくらいなら会社を辞める」と考えている人は4割を占める結果に。
また、「不本意な転勤を受け入れるくらいなら会社を辞める」意向は、20代男性や20代〜40代の女性で、情報処理・通信技術職、ハイパフォーマー、社外価値が高いと自己認識している人などが多い。
1割が「実際に転職を理由に転職している」
実際に転勤を理由に転職した人の割合は、20〜30代が10%と最多であった。
なお、離職を決めたタイミングは、転勤の「内示、辞令が出てから赴任まで」が最も多い。次いで、転勤の内示、辞令は出ていないが、「私生活に変化があったタイミング」で離職を決めた人が、4分の1を占める結果となった。
一方で、離職決定理由としては、「赴任先や条件が希望と合致していなかったこと」「転勤のメリットが不十分」「家族への気兼ね」などが挙げられた。
離職につながる価値観は「居住地や自分らしさ」など
志向性別で見ると、「居住地や自分らしさ」「家族・恋人との時間」「1つの会社だけに依存しないパラレルワーク」を重視する志向を持っていると、不本意な転勤を受け入れるくらいなら会社を辞める意向が高いことが分かる。
また、会社と従業員の関係性に対する価値観を見ると、「家庭事情への配慮の期待」「主体的なキャリア形成意識」「同調圧力」の3つが、不本意な転勤を受け入れるくらいなら会社を辞める意向と関係している。同調圧力には、プラスとマイナスの作用が見られ、周囲が従っているのであれば不本意でも受け入れるが、個別配慮などが行われている状況では離職する意向が高い。
なお、転勤を受け入れる条件としては、「毎月の手当」「一時金」などの金銭的手当や、「やりたい仕事ができる」「昇進、昇格を伴う転勤である」「希望勤務地である」といった本人の希望の実現、「自分が選ばれた理由の説明」が上位に入る。一方、「将来の昇進、昇格において転勤経験が考慮される」「転勤により成長できる」は、回答率が低い結果となった。
転勤がある企業の総合職社員のうち、「基本給の20%程度の手当」があると転勤を受け入れる人が約半数に達する。一方で、「基本給の30%以上の手当」があっても受け入れようと思わない人は4割を占める結果に。また、一時金に関しては、「どんなに一時金が高くても納得できない」が1割程度であった。
なお、同調査の概要は次図のとおり。
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