「ビズリーチ」のスカウト機能は、社内向けにもニーズがあった
世は「大転職時代」。企業にとって、いかに人材流出を防止するかが重要なテーマとなっており、各社が対応を急いでいる。そんな中で活用したいのが、ビズリーチが提供している、その名も「社内版ビズリーチ」だ。
転職がこれまで以上に一般化した昨今、「転職サイト『ビズリーチ』を知らない人はいない」というほど導入規模が広がっている。花岡氏によると、ビズリーチの導入企業は3万社超にのぼり、スカウト可能な会員数は270万人以上。国内有数の転職マッチングプラットフォームへと成長している。
「ビズリーチは、企業内で新たに採用が必要なポジションが発生した際に、候補者とのマッチングを実現するサービスです。マッチングの機会を提供するだけでなく、これまでどんな求人データがあったのか、また実際にどんなポジションと人材がマッチングしたのかといったデータを蓄積しているのも大きな特徴です」(花岡氏)
登壇者

花岡 健人(はなおか けんと)氏
株式会社ビズリーチ HRMOS事業部 HRMOSタレントマネジメント部
2012年4月に株式会社ワークスアプリケーションズ(現 株式会社Works Human Intelligence)に入社。大手企業向けのセールスとして、主に関西圏のマーケットを担当。2018年8月に株式会社ビズリーチに入社。ビズリーチ事業部 総合企画にて、日系大手企業向けの支援に従事。中途採用支援を皮切りに、社内人材の最適配置やキャリア自律支援といったテーマで支援の幅が広がり、社内版ビズリーチを構想し、現在に至る。
同社が16年間支援してきたのは、企業と社外の人材とのマッチングだ。一方、2018年に入社し、ビズリーチ事業部に所属して日系企業の採用支援を行ってきた花岡氏は、いくつかの顧客が、社内を対象にビズリーチのようなマッチングの機能を実装できないかと考え、独自にプロジェクトを立ち上げていたと振り返る。
「やりたいことは、社内の仕事・ポジションの見える化と社員のスキル・経験を見える化し、それらをマッチングすることで、最適な配置やキャリア自律を支援することでした。これらのニーズを知り、『ビズリーチでできることが、なぜ社内ではできないのだろう』と考えたことが、社内版ビズリーチを開発したきっかけです」(花岡氏)
社外人材とのマッチングを叶えるビズリーチと、社内人材とのマッチングを叶える社内版ビズリーチ。この2つを統合し、「人的資本データプラットフォーム」を構築するのが、同社が掲げる未来だ。

[画像クリックで拡大表示]
転職希望者が過去最多のいま、「人材採用力」だけでなく「人材活用力」が重要
企業が社外からの採用だけでなく、社内の人材活用にも目を向けはじめた背景には、いくつかの要因がある。たとえば、雇用環境の変化はその1つだ。
総務省の調査によると、2023年の転職希望者は1007万人で過去最多。有効求人倍率も高い水準が続いている。花岡氏は、同社が2024年5〜6月に実施した調査結果によると、直近1年で退職者が増えたと回答した企業は全体の約6割を占めたと紹介した。

[画像クリックで拡大表示]

[画像クリックで拡大表示]
なぜ、これほどまでに転職を希望する人が増えているのか。同じくビズリーチの調査結果によると、9割以上の会員が「企業に依存せず、自律的にキャリアを形成する必要があると感じている」と回答している。さらに、所属している企業で希望するキャリアを築けていないと回答した会員も7割近くに達していた。


これらの調査結果から、転職市場が活発化している背景には、今のキャリアに満足しておらず、転職という選択をしている人が多いことがうかがえる。そのうえ企業は、有効求人倍率が高止まりしていることから、退職者が出てもその穴を埋めるのも容易ではない状況が続く。花岡氏は次のようにまとめる。
「社内にどんなポジションがあるのか、あるいは社員に対してどんな仕事・ポジションが向いているのかをサジェストするのはなかなか難しい。だからこそ、そうした点を可視化できている企業は、離職者を少なく維持できている傾向にあります。昨今の大転職時代では、『人材採用力』だけでなく『人材活用力』をいかに高められるかが、大きなカギといえるでしょう」(花岡氏)
「人材活用力」を高める2つのポイントとは
では、人材活用力を高めるには具体的にどうすればよいのか。花岡氏は「人事と部門の協働」と「人事データの活用」をポイントとして挙げる。
前者について、花岡氏は採用戦略の変化などを踏まえながら次のように話す。
「昨今は事業環境の変化が著しく高速化し、業務の細分化や高度化も進んでいます。加えて、転職が一般的になったことで、即戦力人材をいかに確保できるかがポイントになっています。
こうした状況において、従来の新卒一括・終身雇用を前提とした、人事主導の中央集権的な採用体制では対応が遅れてしまいます。そこで、部門主導の採用体制の必要性が生じているのです」(花岡氏)

[画像クリックで拡大表示]
従来であれば、採用した人材が長期的に在籍するのが当たり前だったことから、じっくりと育成し、各現場に配置することができた。また、ゼネラリストへの育成が中心だったため、人事部主導でも問題がなかった。
一方、昨今は転職が当たり前になったことで、人材育成にかけられる時間が減少。加えて業務の細分化や高度化により、ゼネラリストではなくスペシャリスト人材のニーズが高まっている。そうした即戦力人材は、人事よりも現場のほうが解像度が高い傾向にあることから、人事はあくまでプロジェクトマネジャーのような役割に徹し、現場部門といかに協働していくかが重要になっていると花岡氏は話す。
「当社が支援したあるクライアントでは、人事と部門双方の連携が不十分という課題を抱えていました。そこで、双方のコミュニケーションを活発化させることで、『部門で何が起こっているのか』『今、どんな人が必要なのか』といった視線を合わせることに成功し、採用活動の強化につながりました」(花岡氏)

[画像クリックで拡大表示]
人事データ活用は、2段構えで考える
そして、人材活用を考えるうえで欠かせないのが、人事データの活用だ。「データの整備」と「そのデータをいかに活用するか」という2つの視点で進めていくとよいのだという。
データの整備としては、社内にあるポジションの言語化・可視化および社員情報の可視化を行う。花岡氏は、よくある課題やポイントについて次のように話す。
「データ整備では、『社員のレジュメ情報の陳腐化』と『ポジション要件の定義がうまくいかない』という課題をよくお聞きします。前者は『社員のスキル・経験を可視化したいものの、1〜2回のアップデートにとどまってしまい、その後の情報更新が滞る』といった課題です。後者は、これまでゼネラリスト志向で人材育成を行ってきた企業で頻発する傾向があります。
ただ、ポジションや社員の情報がない限り、社内にあるキャリア機会を提示できませんし、人事としてもポジションごとに最適な人材配置を行ううえでの機会損失となってしまいます。もちろんすべての人事情報を明らかにするのは難しいかもしれませんが、『どのような情報を、どのくらいの頻度・鮮度で提供するか』といった戦略を定めて取り組むとよいでしょう」(花岡氏)
データの整備をしたうえで取り組むべきが、人事だけでなく部門でのデータ活用促進だ。「マッチ度」という形で、社員とポジションの相性をサジェストする仕組みをつくるのも有効だ。こうした取り組みによって、社員が「自身のキャリア形成の役に立ちそうだ」と感じれば、自らの経験やスキルといった情報を更新するモチベーションにもつながり、好循環が生まれる。

[画像クリックで拡大表示]
「人材活用力」が高まる!社内版ビズリーチが有する「5つの機能」とは
ここまで解説したようなポイントを一気通貫で実現し、社内でのキャリア機会の発掘・提示や人材配置の最適化に資するのが、冒頭でも紹介した社内版ビズリーチである。
社内版ビズリーチの強みは、これまで多くの企業・会員が利用してきたビズリーチで収集した「どんな求人データがあったのか、そしてそのデータにどんな人材がマッチングしたのか」など、転職市場のデータやノウハウを基にしていること。そのうえで、主な機能として花岡氏は5つを解説する。

[画像クリックで拡大表示]
「社内レジュメの作成」は、人事データや目標・評価データなどを基に、各社員の情報がまとまった資料を作成できる機能だ。「タレント検索」は、自然言語で検索できる点がポイント。「○○部のAさんみたいに、データ分析が強い人」といった質問で簡単に検索できるという。これらの機能は、検索条件をつくる工数が減るだけでなく、使いやすさも向上させるだろう。
さらに、社内にあるポジションの整理もかんたんにできる。「ポジション作成」機能では、該当するポジションの特徴や必要な人材のイメージを入力するだけで、職務概要やスキルタグなどのジョブディスクリプションを作成可能だ。社内のどのポジションに、どんな人材がどのくらいいるのか、人数は充足しているのか、不足しているのかなどをモニタリングできる「ポジション管理」機能と合わせて、社内の現状を可視化できる。
これらを踏まえて「社内公募」として、社員に向けて「現在、どんなポジションで人材を募集しているのか」「自分とのマッチング度はどのくらいか」といった点をサジェストする機能を活用することで、社内公募・人材配置の活性化が進むことはうけあいだ。
「選ばれる企業」になって、人材流出に歯止めを
さらに花岡氏は、社内版ビズリーチを導入し、「人材」と「ポジション」の両面でデータ活用を進めた事例を2つ挙げた。
社内公募への応募が少なく、これまで社外からの採用に頼る部分が多かったある企業では、社内版ビズリーチによって社内にあるポジションの可視化やそのポジションにマッチする社員の検索性が進み、社内公募の応募が伸びたという。

[画像クリックで拡大表示]
また別の企業では、「データに基づく人材活用ができていない」「社内公募の運用がうまくいっていない」といった課題を背景に社内版ビズリーチを導入。社内にあるデータの集約や可視化を通し、人材市場のデータを基にしたハイパフォーマーへの報酬最適化や、社内外からの人材調達による最適配置の成功といった成果が出ている。

[画像クリックで拡大表示]
転職がこれまで以上に当たり前となり、退職者が出るのは「仕方ない」時代の昨今。そんな中でも人材流出に歯止めをかけるには、従来のような「選ぶ」立場ではなく、「選ばれる」企業になる必要があると花岡氏は指摘する。
「選ばれる企業になるには、社内にどのようなキャリア機会があるのかを明らかにして、社員に示唆する必要があります。社員のスキル・経験の可視化とポジションの可視化を通し、最適配置による離職防止や、自律的なキャリア形成を促進する社内版ビズリーチは、必ずお役に立てるはずです」(花岡氏)
人事データの可視化やポジションと社員の高精度なマッチングをかんたんに整備できる社内版ビズリーチ。貴社が大転職時代を生き抜くために、ぜひ活用してみてはいかがだろうか。