Jouleエージェントで人とAIとの協働を支援
すでにSAP SuccessFactorsでのJouleの適用は進んでいる。2025年上半期リリースで加わった「SAP SuccessFactors Enterprise Service Management」は人事サービス/ヘルプデスクのあり方を問い直した、とAlbert氏。従業員が育児休暇について質問したいとき、Jouleに直接質問すれば、会社のポリシーと従業員の適格性に基づいて、正確でパーソナライズされたガイダンスが瞬時に提供される。人事サービス担当者側では、AIがサービスリクエストを自動分類し、最適な次善アクションを提案する。食品・飲料業界のDöhlerグループでは、事案の解決時間が33%短縮、生産性は4倍に向上、メール作成時間が80%削減されたという。
「従業員の89%が、人事関連の質問にAIで回答を得られるようになれば働きやすさが改善される」というSAP SuccessFactorsの調査も紹介した。
このSAP Connectでは、AIエージェント「SAP SuccessFactors Performance & Goals Agent」を発表した。パフォーマンス面談の前に、マネージャーがすべてのフィードバックを集める手間が省けるだけでなく、エージェントが文脈を理解し、会話のきっかけや質問を提案するというエージェント機能だ。
これに加え、今後12ヵ月で給与、キャリアと人材開発、人材インテリジェンス、HRサービスなど、約12のエージェントを展開する計画だ。現在、約178のAIユースケースが利用可能になっている。
これらすべてのエージェントは、Jouleを通じて利用される。Jouleは2022年秋に発表され、当初は英語のみだったが、2025年に入って日本語を含む10言語が追加された。多国籍企業にとっては、大きな前進となっている。
SAP Connectではさらに、AIエージェント同士が連携する「Agent-to-Agent」機能として、SAPのJouleと外部のコンテンツプロバイダとの連携が発表された。最初のパートナーはGlobalization Partners(G-P)とThe Josh Bersin Companyだ。「たとえば、HR担当者がパフォーマンス管理モデルについてJouleに尋ねると、JouleはJosh Bersin Companyのエージェントである『Galileo』と連携し、関連する研究や助言を提供する」とAlbert氏は説明する。
Albert氏は顧客のAIの受け入れについて、「顧客により、導入段階が異なる。我々ベンダーは生成AIはもはや当たり前と言いがちだが、顧客の中には生成AIの機能を活用しようと取り組みに着手したばかりというところもある」と分析。さらには、組織の中でもAIに前向きな従業員と後ろ向きな従業員がある。SAPでも“ランチ&ラーン(Lunch and Learn)”を開催し、マネージャーをはじめ従業員が個人の成功体験を共有し、組織全体に広げる取り組みを進めているという。「本当に使って大丈夫なのか、という不安があるのは当たり前のことだ」とAlbert氏。新しく革新的な技術であるため、企業は技術を用意するだけでなく、心理面での支援も必要といえる。
「完璧を求めるのではなく、進歩を重視する。完璧に整うのを待つと、遅れをとることになる。パイロット方式や小規模なグループで始めてもよいだろう」とAlbert氏は助言した。
日本市場についても同じで、顧客のAI受け入れには差があるという。日本は人事制度も独自であり、SAP SuccessFactorsではローカルの取り組みを重視している。「日本市場向けのイベントを開催し、顧客と密に対話して多くの学びを得た。顧客同士でも学びがあったというフィードバックをもらっている」とAlbert氏。2026年以降も、日本市場に特化したイベントを継続して開催する計画だという。

