“管理職の延長線上”で考えない——欧米と比較して見えてくるもの
本章では、米国企業と日本企業の雇用慣行やタレントマネジメントの違いから、それぞれのサクセッションプランについて考察します。
まず、米国は、1950年代からサクセッションプランがタレントマネジメントの施策として定着していています。米国企業では、ジョブ型に代表されるように、職務内容と権限・責任が明確に規定されており、その要件に満たす人材をアサインするという文化が根付いているのです。また、CEOや役員、事業部長などの経営幹部人材は、上位から困難なミッションを与えられて遂行する管理職とは異なり、新規事業への参入や既存事業の撤退など、不確実な状況の中で、経営のイシューを自ら設定し、解決に導いていくことが役割といえます。
米国における経営幹部人材とは、そもそも管理職の延長線上ではなく、早期に選抜して経験を積ませて育成するものという考え方なのです。
一方、日本企業では、年功序列やメンバーシップ型雇用が中心であり、内部昇進が多く、長期間かけて育成した人材の中から選抜されて経営幹部人材になるという慣行があります。そのため、暗黙知の中で、管理職の延長線上として経営人材を捉えてきたため、経営幹部人材としての明確な要件は設定されてきませんでした。
さらに、終身雇用や年功序列に基づく育成の仕組みの中では、公平性や平等であることが重視されます。経営幹部人材に選抜されなかった人のモチベーションの低下を懸念するため、候補者に選ばれた対象者にも内示せずに育成することが多くなっています。
また、ジョブ型への移行が進んでいる中で、公平性・平等性を過度に配慮し、タフアサインメントに代表されるような修羅場体験や経営ポストへ柔軟に抜擢することが難しく、ポテンシャルが高い人材の早期選抜や抜擢に基づく育成がしづらい状況を生んでいるといえます。
そして、サクセッションプランでは、候補者を選抜して、経営幹部人材となるように育成する必要があり、さらには経営幹部人材となってからも継続的に育成していく必要がありますが、その育成の仕組みが整っていないのが現状です。
サクセッションプランを成功させる3つのポイント
以上を踏まえて、サクセッションプランの成功のポイントを次にお伝えします。
- 経営マターとして、未来シナリオから逆算して、将来の経営戦略の実現に向けて必要な人材像、あるべき人材像を定義
- 経営を巻き込んだセッションプランを効果的・効率的に運用するプロセスの設計
- 経営幹部人材になるための育成プラン、経営幹部人材に対する育成プランの整備
次回は、成功するサクセッションプラン設計のポイントと題して、これら3つのポイントを解説します。

