3. 要点解説
(1)試用期間について
試用期間とは、本採用の前段階として、労働者の能力・適性等を見極めるために設けられる期間であり、一般に「解約権留保付労働契約」と解されています。
もっとも、試用期間中であっても、使用者が自由に解雇できるわけではありません。
判例上、試用期間中の解雇(留保解約権の行使)は、試用期間を設けた趣旨・目的に照らし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限って許されるとされています。
本判決も、この枠組みを前提に、「試用期間中であること」自体は解雇を正当化する理由にならないことを明確にしています。
そして、今回のように中途採用者の場合であっても、採用時に具体的に確認されていない能力や成果を理由に、短期間で不適格と断じることは許されないとしました。
(2)今回のケース
会社側は、「富裕層人脈があることを前提に採用した」「提出された名簿が実態と異なり、期待していた能力がなかった」「営業成果が出ていない」などを理由として、試用期間中の解雇を正当化しようとしました。
しかし、裁判所は、「2次面接において、名簿掲載者との具体的な人的関係を会社側が確認していないこと」「富裕層人脈の有無が、労働契約上の必須要件として明確に合意されていたとはいえないこと」「営業成果についても、職務内容や事業特性上、短期間で成果が出にくいこと」「指導内容が抽象的で、改善の機会が十分に与えられていないこと」を重視しました。
その結果、「従業員として勤務させることが不適格」「業務に適性を欠く」と評価することはできないと判断しました。
その結果、今回の解雇は、留保解約権行使としても客観的合理性・社会的相当性を欠き、無効と判断されました。

