これからの人事が備えるべき“4つの視点”
では、AIエージェントの活用が進んでいく中、人事はどのような知見を身につけるべきなのか。山中氏は、AIエージェントを含めた「AIの進化」によって起こる「4つの変化」を紹介した。
それは、「組織構造の変化」「職務内容の変化」「採用市場の変化」「社員体験の変化」の4点である。次に詳しく見ていく。
①組織構造の変化
一言で言うと、「サイロ化の解消」が起こるという。
これまでの組織は、マーケティングや営業、人事など、機能別の組織で事業運営を行い、それぞれをERPシステム(基幹システム)でつなぐことによって、1つの組織として成立してきた。これが、AIエージェントの導入によってフラットにつながるようになる。
「縦割りや領域別といった概念が取り払われることになります。人事は、各機能がAIでつながった状態で、全体をマネジメントしていくことが求められるようになるのではないでしょうか」(山中氏)
②職務内容の変化
また、企業においてAIエージェントの活用が浸透すれば、従業員に求められる役割も変わってくる。AIを中心とした業務フローが確立することによって、AIに代替される業務が発生するからだ。
「人事は、職務を見直してAI最適な役割を再開発していくことが求められます。この変化は待ったなしで起こると思われます」(山中氏)
③採用市場の変化
AIエージェントによって、従業員1人ひとりの生産性は大きく向上する。その流れの中で、米国ではAIを活用して高い成果を出す個人である「スーパーワーカー」が誕生しているという。
「AIエージェントを使いこなすスーパーワーカーの採用、そして育成が必須になってくる。社内にそうした人材がどれくらいいるかによって、企業の生産性向上や成果の創出に影響を及ぼします」(山中氏)
④社員体験の変化
AIエージェントは、企業の事業活動をサポートするだけではない。AIによる「パーソナライゼーション」が、個別ニーズに合わせた従業員体験を実現する。
これまでは、従業員の声を聞き全体の傾向に合わせて施策を打つことが多かったが、これからはAIが1人ひとりの体験に寄り添い、福利厚生から報酬、育成に至るまで個別最適化する「パーソナライズ人事」を提供することが重要になる。
すでに米国では、従業員1人ひとりに最適な保険や健康プログラムが提案されるAIサービスが提供されているという。山中氏は、「個別最適化された福利厚生や報酬システムを丁寧につくれることが、従業員から選ばれる企業の条件となっていくのではないか」と示唆した。
つまり、組織構造はサイロ化の解消の方向に変化し、職務の役割を再定義する必要が出てくるだろう。採用市場においては、AIエージェントを使いこなすスーパーワーカーが求められ、社員体験においてはパーソナライズが鍵となる。
主に米国のトレンドをもとにHR領域のAI活用を解説した本セッション。最後に山中氏は「何かしらの変化が日本の企業組織の人事でも起きてくるはず」と強調して締めくくった。


