採用では「特に“外国人枠”を設けていない」
モンスター・ラボは2006年設立。同年にはインディーズ音楽配信サービス「monstar.fm」、2014年にはグローバルソーシングサービス「セカイラボ」をリリースするなどしてデジタルパートナー事業、ゲーム事業、音楽事業を柱として、ビジネスを国内外に展開している。国内外に拠点や子会社を多く持つのも特徴だ。事業や拠点がグローバルであることからも、外国人エンジニアは多い。日本オフィスでは社員全体の4分の1が外国人で、エンジニアとなると約半分は外国人だという。
なぜ、これほど多くの外国人を採用しているのか。また、採用できているのか。村上氏は「特に“外国人枠”を設けているわけではありません。国籍にとらわれず、分け隔てなく採用しています」と説明する。
外国人だから良いとか悪いとか、採用の可否に国籍は関係ないという。あくまでも採用では「モンスター・ラボで活躍できるかどうか」(村上氏)を主眼としている。エンジニアであれば語学力よりもスキルが重視される。そうしたスタンスで採用してきた結果、自然と外国人エンジニアが増えたという。
海外の子会社や拠点とのブリッジとなるニーズから外国人採用が広がった
国籍は関知しないというスタンスに加え、背景には2つの要因が考えられる。1つは、日本全体で日本人エンジニアが不足していることと、同社が早くから外国人エンジニアに門戸を広げていることだ。前者は広く知れ渡っている話だ。2016年6月に経済産業省が発表したIT人材の需給に関する推計によると、IT企業に所属する人材の不足数は現時点で13.2万人で、2020年には29.6万人に膨れ上がるという見込みだ。現時点でも十分不足している。
いま日本人エンジニアは圧倒的な売り手市場なので、企業が求めても、優秀な日本人エンジニアとなると採用はかなり難しい。そのため、国籍にとらわれずに応募を受け付けていれば、自然と外国人の採用が増えたというのはうなずける。
ただし、どんなに日本人エンジニアが不足していたとしても、外国人エンジニアが応募し、モンスター・ラボが採用しなければ採用増加には至らない。モンスター・ラボが数多く外国人エンジニアを抱えることができた背景には、日本国内でのみビジネスを行っていた創業当時から外国人エンジニアを採用しているという実績もある。その後、中国、ベトナム、バングラデシュ、アメリカへと海外展開を続ける中で外国人採用が加速した。
最初の国外子会社を中国で設立した2012年、日本と中国とのブリッジとなる人材が必要となり「中国語ができる人」を募集した。「中国語ができる人」を募集したわけで日本人でも構わなかったのだが、中国人からの応募が多かった。もちろん中国人でも差し支えないということで、彼らの中から採用を行ったという。
早い段階から外国人が働いているとなると、外国人エンジニアから見たら応募のハードルが低くなる。全く外国人エンジニアがいない企業に比べれば、すでに外国人エンジニアが働いていれば何かと環境は整っていると期待できるからだ。口コミもあるだろう。「ここなら働けそうだ」という安心感を得て応募が増え、採用も増えてきた。
ここまで話を聞くと、「日本語以外の言語が話せないと採用されないのか? それなら外国人に有利ではないのだろうか」と思えるかもしれない。しかし、モンスター・ラボの日本オフィスでは、日本語が公用語だ。また、外国人であろうとも日本オフィスでは「日本語でコミュニケーションできること」を採用の条件とする。エンジニアであればスキル重視であり、日本語スキルはそんなに高いレベルは求めていないものの必須ではある。これは外国人から見ればハードルとなりうる。
日本全体の日本人エンジニア不足があり、国籍にとらわれずにエンジニアとしてのスキルと最低限の日本語能力を要件にしたところ、早くからの採用実績もあり、結果的に外国人エンジニアが増えたというのがモンスター・ラボでの実情だ。