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候補者を見極めるためには
今回は、採用選考フローの中の「見極めのテクニック」および「採否決定の基準」「評価者の個人差や評価項目の不備への対応方針」に関して述べていく。フローの図を再掲しておく。
採用選考においては、候補者のどの点に着目して評価を行うかを「評価項目」としてまとめることが重要であると、これまでに述べてきた。それでは、項目としてまとめた望ましい資質やスキルを候補者が実際に持っているかについて、どのように情報を収集し、見極めればよいのだろうか。
見極めのための効果的な方法は、見極めたいスキルの領域によっても当然異なる。本稿の前半では、評価項目を作成する際に用いた次の3つの分類ごとに、弊社での経験を基にした知見を紹介していく。
- ① 候補者の価値観は、会社の価値観とマッチしているか
- ② 会社が社員に広く求める資質やスキルがあるか
- ③ 採用の目的に照らして、適切な準備期間ののちに戦力として活躍できる資質・スキルがあるか
① 候補者の価値観は、会社の価値観とマッチしているか
価値観のマッチを見極める上で非常に効率的な方法の一つが、応募書類の「志望動機」欄の記述を見ることだ。弊社では、応募書類の志望動機に書かれている内容が、自社のミッションや重視していることに合っているかどうかをチェックするようにしている。
もちろん、応募先の会社をよく研究していれば、本来会社の価値観とマッチしていない候補者でも良い志望動機を書くことができるので、志望動機の印象が良いからといって実際に価値観にマッチするとは限らない[1]。しかし、志望動機を書いて来ない応募者[2]や、自社の大事にしている点への言及の見えない応募者が価値観にマッチする可能性はかなり低く、その点で見極めの方法として効果があると感じている。
具体例を挙げてみよう。例えば、教育系の事業をする会社に対しては「最新の技術を使って開発をしたいと思い志望いたしました」というような志望動機よりも、「○○のプロを増やすことが大事だと考えており、ぜひそのお手伝いがしたいと考えました。」という志望動機のほうが、価値観がマッチすることを期待しやすい。人々を健康にするミッションの会社であれば、「大病をして健康の重要さを知り、個人的にもいろいろ研究をしています。」というような内容が志望動機にあれば、価値観がマッチすることを期待できる。
ちなみに、弊社では志望動機は、評価項目の一項目になっているわけではなく、書類選考や採用面接時の参考資料として利用している。
応募書類だけでなく、採用面接を通じても価値観のマッチ度合いについての情報を収集できる。価値観のマッチを見極めるための情報は、本人の興味や大切にしていることや、こだわり、キャリアプランなどに関することが多い。そのため、適切に話題を向ければ、多くの場合、具体的な経験を踏まえて生き生きと話してもらえる。表情や話の具体性などを通じて、比較的面接で情報を得やすい領域だといえるだろう。
注
[1]: 仮に志望動機が就職のための方便であったとしても、「応募先の会社に興味を持ちつながりを示そうと戦略的に行動できる」という点は、一般スキルとして評価できる。
[2]: 世の中には志望動機を書く欄のない履歴書フォーマットもあり、応募者が意図せずに書き忘れるリスクがあるため、弊社では志望動機を書いていただくように特にお願いしている。