私は以前にIT企業でエンジニアと人事をしていた経験を活かし、エンジニア採用に特化した採用コンサルテイングをしています。当社のクライアント企業は大企業からベンチャーまで多岐にわたり、約8か月で40人のエンジニアを採用したり、応募数を3か月で5倍に増やしたりと、企業の課題により事例も様々です。
ITエンジニアの有効求人倍率が約7倍[1]という採用難の時代、多くの企業が採用には苦戦しており、エンジニア採用の糸口すらもつかめていない企業から相談が寄せられることもあります。ですが一方で、魅力的な企業は優秀なエンジニアを集め、それが呼び水となり、より優秀なエンジニアが集まっていくという二極化現象が起こっているようにも感じています。
あなたの企業はなぜ優秀なエンジニアを採用することができないのか――今回は、エンジニア採用に成功している企業の取り組みや当社のコンサルティングの事例から、それを紐解いていきたいと思います。
そもそも採用は人事だけの仕事ではない
私の知る限り、多くの企業ではエンジニア職とそれ以外(例えば営業職、コーポレート職など)を分けずに、人事部門の採用担当者が求人票を書いたり採用のオペレーション設計・運用を行っています。面接についても前半部分の面接は人事のみで行い、最終面接などの段階でエンジニア部門の責任者に「最後やってください」とお願いすることはよく見られる光景です。これは人事とエンジニアのコミュニケーションが不足していたり、人事がエンジニアに遠慮していたりして、両者の「距離が遠い」ために起こる現象だと捉えています。
人事やビジネスサイド側の社員とエンジニアの距離が遠い会社だと、「エンジニアと人事との相互理解が進まない→関係性が硬直化する→コミュニケーションをとらなくなる→エンジニアを巻き込めず人事だけで採用を回す→エンジニアが採用できない」という負のループに陥ります。人事やビジネスサイドの人にエンジニアリングに明るい人がいれば、このような負のループに陥らず採用できるかもしれませんが、例外的でしょう。
では、人事とエンジニアとの距離が遠い環境において、エンジニア採用を成功に導くためにはどうしたらよいでしょうか。エンジニアリングを理解していないことが原因なのですから、極端な話、人事・ビジネスサイドの人がプログラミングスクールに行ってプログラミングを学び、エンジニアのやっていることや気持ちを理解すればよい……のかもしれませんが、実際には難しいこともあります。
私がお勧めする解決策は、「エンジニアやジンジニア[2]自ら採用オペレーションを回し、コミットすること」です。これは当社のお客様先でも推進しており、成功しやすい策です。
例えば、エンジニアの応募者が一番嫌うことに、「一次面接をエンジニアリングを理解してない人事のみで行い、コミュニケーション能力や志望動機のみ審査される」ことがあります。新卒のエンジニア面接でも絶対にやめるべきでしょう。エンジニアは自分の専門性やスキル、どんなことにコミットしたいかを見てほしいと思っています。面接官が人事のみだと、エンジニア(やエンジニア志望の新卒)は経験や専門性以外のことが優先されていると思い、選択肢から外してしまう可能性が高まります。
専門家ではない人を採用フローに充てがうことで失うものは非常に大きいと心得ましょう。逆に一番良いのは、社内にいるエンジニアやエンジニアの素養がある人が採用プロセス全体を設計し、回すことです。
- どんな人を採用するか
- 人物像の言語化
- 面接以外の採用手法(ペアプロなど)を取り入れるか
- 面接には誰が出るか
- どんな質問をするか
- どんな言葉で自社のアピールをするか
これらのことをエンジニアやジンジニアに決めてもらいましょう。そして、求人媒体の選定や細かなオペレーション部分などについて助けを求められたら、人事の方は喜んで協力してあげてください。
なお、よくある話ですが、現場のエンジニアが「採用に充てる時間がない」とぼやく場合があります。しかし、それはトップマネジメントの問題です。経営層やCTOが「採用が一番の課題で優先すべきことである」と言えるかどうかが重要です。経営トップが採用にコミットできる会社はより良い人材を獲得できるでしょう。
注
[1]: 出典:DODA 転職求人倍率レポート(2018年7月)
[2]: ジンジニアとは人事+エンジニアの造語で、エンジニア出身の人事やエンジニアと人事を兼務している人をいう。