今年も3月から2019年卒学生の新卒採用が解禁になりました。マイナビが実施した調査によると、今後の見通しとして、7割以上の企業が「2019年卒の採用活動は厳しい」と回答。引き続き苦しい状況が続くと予測されています。一方で、採用数は「増やす」企業が2割で、「減らす」を上回り、厳しい状況ながらも採用増を目指す企業の姿が明らかになっています。
加熱する一方の新卒採用を取り巻く状況
近年の圧倒的な売り手市場を反映し、企業は新卒学生を囲い込むため、様々な取組みを実施しています。特にITベンチャー企業は、一律の初任給を撤廃する、内定者の海外研修費用を負担するといった施策を積極的に導入しています。とりわけエンジニアの獲得競争はますます激化していると言えるでしょう。
サイバーエージェント(CA) | メルカリ | ディー・エヌ・エー(DeNA) |
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■新卒者への施策 2018年4月以降に新卒入社するエンジニアが対象。
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■新卒者への施策 2018年4月入社の新卒内定者より、入社前から昇給させる新制度「Mergrads(メルグラッズ)」を導入。 |
■新卒者への施策 エンジニアスペシャリスト採用。新卒でも年俸1000万円の可能性あり。 |
■施策の内容・対象者
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■施策の内容・対象者
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■施策の内容・対象者 エンジニア職のAIスペシャリストコースでは、機械学習(Machine Learning)/深層学習(Deep Learning)分野の研究開発において、優れた実績を持つ人が対象 |
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大手では書類選考にAIを導入する企業も
近年のトレンドとして、エントリー数が数千〜一万人を超えるような大手企業では、書類選考にAIを導入する動きも見られます。書類選考にAIを活用するのはリクルートやソフトバンクが先駆けとして知られていますが、人材系やIT企業だけでなく、銀行やメーカーのような非IT企業でもエントリー数が多い場合にはAIを導入しているのが特徴です。どの企業もAIを活用する目的は「統一された評価軸でのより公平な選考」「人事担当者がエントリーシートの確認作業にかかる時間を軽減し、対面でのコミュニケーションに充てる」としている所は共通しています。
リクルート | ソフトバンク | サッポロHD | 横浜銀行 |
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■採用でのAI活用例 2015年10月から人事業務の進化を目指すプロジェクト「HR Tech Ops」を開始。2016年から書類選考業務にAIを活用。 |
■採用でのAI活用例 2017年より新卒採用時のエントリーシートにIBM Watsonを活用。 |
■採用でのAI活用例 2019年卒書類選考から、新卒採用にAI判定導入。 2018年卒実績はプレエントリー1万6000人、エントリー6000人、入社内定者は63人。 |
■採用でのAI活用例 2019年卒新卒採用のエントリーシート選考においてAI判定を導入。 エントリー数は数千件。2018年卒の新卒採用人数は159人。 活用するAI技術は、FRONTEOが開発した「KIBIT(キビット)」。 |
■AI活用の理由
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中小企業は母集団形成に躍起にならなくていい
では、大手でもなく、人気ベンチャーでも無い、BtoBの中小企業や採用担当者の数が少ないスタートアップ企業ではどのように新卒採用を行ったらよいでしょうか。
筆者の周辺には、新卒採用目標が10人ほどなのに、1000人前後の母集団形成を目指している企業がたくさんあります。つまり、可能な限り母集団を多く集め、そこから選抜していく方針です。ただし、10人の採用枠に対し1000人のエントリーがあったとして、そこからふるいにかけていくのは至難の技。現実的ではありません。仮にできたとしても、エントリーシートの確認だけで膨大な時間を費やすでしょう。
一方で、採用担当者の間では「母集団を増やさなければいい人が採用できない」といった母集団神話があることも事実です。