そもそもエンゲージメントとは何か
社員や組織の状態について話すとき、「エンゲージメント」という言葉がこの数年でよく使われるようになりました。ISO30414や人的資本の情報開示の文脈でもエンゲージメントは言及されており、投資家からも注目されています。しかし、人事がエンゲージメントという言葉を、それが何を指しているのかが曖昧なまま使用するシーンが多く見受けられます。
エンゲージメントは「深い関係性」という意味です。人事領域では「ワークエンゲージメント」と「エンプロイーエンゲージメント」の2種類があります。この2つは、何に着目するかで大きな違いがあります。
- ワークエンゲージメント:「個人と仕事」の関係性
- エンプロイーエンゲージメント:「個人と組織」の関係性
ワークエンゲージメントは学術研究から生まれた概念で、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態として、 「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つがそろった状態として定義されています。
一方で、エンプロイーエンゲージメントはビジネス領域でよく利用される言葉で、社員が組織に対して持つ愛着や、帰属意識、ミッション・ビジョンへの共感を含む概念です。離職や顧客体験(CX)との関係性が強いともいわれています。
たとえば、ソフトウェアエンジニアが「コードを書くときは夢中だけど、会社の将来性が不安……」と感じているときは、ワークエンゲージメントは高いがエンプロイーエンゲージメントが低い状態。一方で、経理のメンバーが「会社の理念は好きだけど、ルーチンワークばかりでつまらない」と言うなら、エンプロイーエンゲージメントが高くワークエンゲージメントが低い状態、といえるでしょう。
このように、対象とする関係性が仕事か会社かの違いがあり、視点がずれると実施する施策もズレてしまうため、注意が必要です。