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VP of Engineeringの部屋 | #1-b

VPoEの仕事はSEと同じ、システム設計的な面白さや醍醐味がある――ピクシブ VPoE 小芝敏明氏《後編》

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 近年注目を集める企業のVP of Engineering(以下、VPoE)にスポットを当てる本連載。前回に続きピクシブ株式会社でVPoEを務める小芝敏明氏に、ホスト役のリクルート テクノロジーズ 黒田樹氏がインタビューする。前編では主に、ピクシブのエンジニア組織「エンジニアギルド」の活動内容やマネジメントに焦点を当てた。後編では、小芝氏の考える理想のエンジニアリング組織やVPoE像、そしてこれからの課題や目標について伺ってみた。

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本稿の前編はこちらから。

管轄は明らかにしつつ越境発言もできる環境をつくる

黒田樹氏(以下、黒田):小芝さんの考える理想のエンジニアリング組織とは、どのようなものでしょうか。

小芝敏明氏(以下、小芝):現在のエンジニアギルドは、まさにその理想像の実装の第一歩だと思っています。私自身は、エンジニアは作るだけに専念するのでなく、より深く本質的な問題に取り組めるほうが楽しいと思っているので、それを可能にする組織づくりと言えるかもしれません。

 とりわけインハウスエンジニアのあり方には、いつも関心を持ってきました。実際のITプロジェクトでは、社員や協力会社などさまざまな立場の人がいます。その中でインハウスエンジニアは、ビジネスとエンジニアリングの双方に軸足を持っている。そのバランスや立ち位置をどう考えるかは、エンジニアリング組織全体にとって重要な問題です。

小芝 敏明氏
小芝 敏明(こしば としあき)氏
ピクシブ株式会社 執行役員 VP of Engineering コーポレート本部 コーポレートエンジニアリング部 マネージャー。
SIerでの基幹業務システム開発を皮切りに、ポイントサービス開発、広告配信システム開発、技術カンファレンス主催、組織作りなど、テクノロジーとエンジニアリング一筋。今は10年先まで成長できる体制を組織と文化とシステムの面から担当する仕事をしている。
キャッチフレーズは「真面目なSE、真面目にSE」

黒田:そのために、どんなことを具体的に心がけていますか。

小芝:各人の創意工夫を引き出すために、バウンダリー(境界)を強くせず、あえて全体の温度感で考えるとかですね。誰の管轄とか杓子定規で分けずに、いい思いつきはお互いに述べ合う。ただし一方で、担当や管轄をきちんと決めてほしいという声もあります。かっちり境界を引きすぎたらいけないし、反対に明示的にしないと分かりにくい。両方をバランスよく配分して、最適化するのがポイントです。

黒田:組織一丸でもなく個々人でもなく、全員で1つの目標に対するフォーメーションを組んでいる印象です。よくある縦割りの組織だと、各部門や担当領域が壁になりがちですが、エンジニアギルドは1つのチームとしてオフェンスやディフェンス、中盤がそれぞれの持ち場で闘っているというところですか。

小芝:まさに、そういう感じに近いですね。私から見ても、組織をまたいでインシデントが起こったときにも、素早く連携できるような動きを実現できています。実際に、その鮮やかなインシデント解決の議事録を見て、「欲しかったのはコレだよ」みたいに独りでほくそ笑んだりしています(笑)

“型安全”の組織より今あるダイナミズムを大事にする

黒田:エンジニアのチームとしては、うらやましいくらい理想のフォーメーションですが、マネジメントの視点から見た場合、責任所在をはっきりさせるために、ついついかっちりとした組織構造にしようとなりがちです。小芝さんご自身、マネージャーとしてどう思っていますか。

聞き手:黒田 樹氏(株式会社リクルートテクノロジーズ ITエンジニアリング本部 HR領域エンジニアリング部 エグゼクティブマネジャー)
聞き手:黒田 樹氏(株式会社リクルートテクノロジーズ ITエンジニアリング本部 HR領域エンジニアリング部 エグゼクティブマネジャー)

小芝:管理という目で見た場合、どうしても各組織や組織構造に一定の責任を持たせたくなりますよね。そうすると、今度はその責任を担う組織を永続化させたいので、体制図を描いたりして“型安全”にするとか(笑)。「今、自由にさせてうまくいっているからこそ、この先もうまくいくように組織図に落とし込んでおこう」みたいな、矛盾した誘惑にかられるのは否定できません。

黒田:そうなったときに、コミュニティ形式のようなゆるいつながりって、組織としては不確実性がもっとも高い構造であって、「組織としての機能の永続性」を揺るがすことにならないかと思うのですが。

小芝:たしかに私自身、もうちょっと“型安全”のほうがいいかなと思う半面、当社の場合それは早すぎる最適化ではないかという懸念もあるんです。それが、あえて今のところ“ゆるい” 組織のあり方を選択している理由です。

 あせって“型安全”に落とし込んで、せっかくのダイナミズムを失わせるよりは、今あるミッションをみんなで全力で追っていって、「じゃあ、次どうするのか?」という地点に到達したタイミングで、改めて組織=箱の形を考える。振る舞いが先にあって、次に名前をつけて箱を作るみたいな順番ですね。

黒田:要するに、みんな優秀でやる気があるんだから、チームの勢いを止めずに走れるところまで走って行く。フォーメーションを組み直す必要が出てきたら、そこでまた作戦を考えればいいじゃないかと。私自身エンジニアとしては、超イメージ湧きますね(笑)

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この記事の著者

工藤 淳(オフィスローグ)(クドウ アツシ)

出版社や制作会社勤務の後、2003年にオフィスローグとして独立。もともと文系ながら、なぜか現在はICTビジネスライター/編集者として営業中。 得意分野はエンタープライズ系ソリューションの導入事例からタイアップなど広告系、書籍まで幅広く。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

黒田 樹(クロダ イツキ)

SIerにて官公庁系の大規模開発のシステムアーキテクトを経て、2011年8月リクルートホールディングスに入社。新規事業開発部門のメディアテクノロジーラボに配属。肥大化する組織にスクラムやリーンスタートアップの考え方を適応させ、ビジネス成長に寄与するエンジニアリング体制を構築。また海外スタートアップの...

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