エンジニア組織長が集まり話し合う場をHRBPがファシリテート
――まずは御社のHRBPチームの組織体制を教えてください。
菅原啓太氏(以下、菅原):HRBPチームは大きく2つに分かれていて、HR本部に属する7名のチームと、我々のゲーム・エンターテインメント事業本部に属する5名のチームがあります。
もともと約5年前にHR本部の中にHRBPチームが立ち上がったのですが、次第にゲーム・エンターテインメント事業が弊社の中核事業として拡大するにつれ、全社員の半数がゲーム・エンターテインメント事業本部に属するような状況になってきたんですね。そこでHRBPチームも2つに分けることになりました。
――チームが分かれた後もHR本部のHRBPチームとの連携はありますか。
菅原:はい。週に一度、定例のミーティングがあって、3時間くらい密にディスカッションしています。新たな制度の導入や事業部間での人事異動の話では連携しなければ仕事になりませんし、野田も私もHR本部に所属していた時期もありますので、自然と交流はしていますね。
――菅原さんと野田さんのそれぞれの役割は、どのようになっていますか。
菅原:事業部門ごとに担当を立てていて、私はオープンプラットフォーム事業と、ゲーム事業の中の技術部というエンジニア部門を中心に見ています。
野田竜平氏(以下、野田):私はインフラに近いところのエンジニア組織と、ゲームコンテンツの開発チーム内にあるデザイナー組織、あとはデベロッパーリレーション部という外部の開発会社さんと協働するエンジニアやアートディレクターの組織の主に3つを見ています。
菅原:部署によって所属人数は異なりますが、1人で5〜6部署くらいを担当しています。
――ちなみに、ゲーム・エンターテインメント事業本部には何名くらい所属されているのでしょうか。
菅原:国内だけで1000人を超える社員が所属しています。海外も含めると、もっと多くの社員が所属している事業になりますね。
――そうするとHRBPの方は、1人当たり結構な人数を見てらっしゃるのですね。普段は具体的にどんなお仕事をされていますか。
菅原:我々の仕事は戦略人事ですが、戦略を立てるだけでなく、事業を推進するために必要な人材と組織の仕事もひと通りしています。例えば、採用・育成にも関わりますし、戦略に基づいた組織設計、組織サーベイの分析、あとは人事的な問い合わせ対応もしますし、問題が起きたところに入ってチームビルディングをすることもあります。HRBPで完結することは難しいですが、少なくとも1次対応はしていますね。我々が受けて、より専門的な知識が必要だと判断すれば、2次対応以降は他のメンバーの力を借りることもあります。
――部門長とはどのような関わり方をしているのでしょう?
野田:部門長から事業の相談を受けて、次のアクションを一緒に考えたり、事業計画から人員計画に落とし込む際の議論をしたりもするので……通常の人事よりはだいぶ事業寄りの人事として関わっていると思います。
僕らが介入した例を1つ挙げると、ゲーム・エンターテイメント事業本部のエンジニア組織は、昨年の4月から私が担当するPublish統括部と、菅原が担当するDevelop統括部の2つに分かれました。しかし、2つの組織間で交流が断絶すると、暗黙的な縄張り意識が出てきて事業に悪影響を及ぼすと思ったので、エンジニアの組織長3名を集めた「ゲームエンジニアボード」という週次の定例ミーティングを設けることにしました。そこでは「部門を横断するリソースアロケーションや技術的課題」「事業部全体の目線で見たときのあるべき組織体制」といった話をしています。また、ゲームエンジニアボード専用のメールエイリアスを作って、どこに相談したら良いかわからない技術的イシューが発生したときには、いったんそこにメールを送ってもらうようにしました。メールが送られてきたら、適任者が手を挙げて解決したり、適切にディスパッチしたりしています。
――一般的な会社では、人事がそこまで入り込むことはありませんよね。HRBPが関わることで、視野を広げた議論ができるということなんでしょうか。
野田:もちろん部門長は優秀な方たちばかりなので、人事が絡まなくても解決できる問題はたくさんあります。とはいえ、立場的なこともあって部門を超えた議論を前に進めるのが難しかったり、話すべき相手とのネットワークがなくて頓挫してしまったり、といったこともあるんですね。そんなときに、組織全体の情報を適宜キャッチアップしていて部門横断的なネットワークを持つHRBPが入って適切な場づくりができれば、スピーディーにインパクトのある意思決定ができると思います。
組織長より~HRBPはこういう存在①
ゲーム事業部 Publish統括部 共通基盤部長 菅原賢太氏
私の組織はエンジニアメンバーが中心でベクトルが異なる複数の事業が混在し、ステークホルダーも多い組織なのですが、HRBPの方々は事業だけではなく、組織内外の状況や私の中にある意志といったものにも理解を深めた上で情報をインプットしてくれるので、組織・事業の運営において自分の中で最適解を見つめる際の良き壁打ち相手だなと感じています。
一方で、彼らがHRBPとして外の組織や事業と関わる中で、エンジニアボードであり事業責任者としての顔を持っている私を活用することで解決できそうな課題があれば、彼らの活動にうまく巻き込まれることもあります。そういう意味では持ちつ持たれつの関係ということで、HRBPは私にとっては会社においての妻のような存在ですね。