エンジニアの尖った部分を生かすマネジメントを
現在、リクルートテクノロジーズ 執行役員のほか、10社を兼務しながら、新人エンジニアからスペシャリストまで、幅広い人材育成に携わっている竹迫氏。中でも2017年以降、毎年公開しているという、リクルートテクノロジーズのエンジニア新人研修の資料は、1000以上のはてなブックマークが付くなど、エンジニア界隈で話題となっている。
竹迫氏は2019年の同資料を見ながら、HTML/CSSに関する研修に触れた。なぜいまさらエンジニアがHTML/CSSの研修を受けなければならないのか。この疑問に対し、竹迫氏は自信と理解度の相関を表したグラフを引用しながら、次のように回答した。
「このグラフは横軸が『時間の経過』を示しており、赤線が『理解度』、青線が『自信』を示しています。新人研修で意識しているのは、出だしの赤い矢印のところ。つまり、自信を持ってもらうための立ち上がりの角度をちゃんとつけることです。
勉強を始めて『完全に理解した』と思えても、実際にはまだまだ理解度は足りません。しかし、自信を持った状態からOJTを始めることで、その後、現場で難しい問題に直面して自信を喪失することがあっても、自力で這い上がることができるんです。ただし、それは基礎力があることが前提。だから新人研修では、“チョットワカル”エンジニアになるための最初の一歩として、きちんと基礎を教えることを大切にしています」(竹迫氏)
技術の進化が激しい昨今、最新の技術に追随できるようDevOpsやHTML5など新しい研修内容を加えつつも、データベースの基礎的な設計や大規模対応チューニング、ソフトウェア工学についてもきちんと学べるプログラムを添えるなど、温故知新を大切にしながら、毎年、内容が更新されているという。
このような研修プログラムをつくっていく背景には、「これからは個人の長所や得意分野(=尖った部分)を生かしつつ、足りないスキルはチームで補完していくことを、人事制度や企業文化で担保していくことが大切だ」という竹迫氏の価値観がある。
「エンジニアには尖りすぎている人が多いですが、企業の均質化圧力によって、尖った部分を削ってしまうのはもったいない。これからは“異なる個”を受け入れ、組織マネジメントで隙間を埋めていく発想が必要なのではないでしょうか」(竹迫氏)