LGBTが日々感じている生きづらさ・働きづらさとは
――まずはJobRainbowの事業について紹介いただけますか。また、なぜ星さんが同社を設立するに至ったのか、理由や経緯をお聞かせください。
誰もが一人ひとりが異なる中で、その違いやダイバーシティを組織の強みとし、それを一人ひとりの自信につなげていく社会づくり。それが私たちJobRainbowがビジョンとする「差異を彩へ。自分らしくを誇らしく」の具体的なイメージです。
“差異”とは「他と違うこと」ですが、私自身もゲイで「生きづらさ」をずっと感じてきました。大学ではLGBTのサークルを主催したのですが、活動を通じてLGBT以外にも障害の有無や国籍などのマイノリティが「生きづらさ」を抱えて生きていることを知り、同時にその原因が個人のせいではなく、多くは社会の側に問題があることも見えてきたんです。そこで多彩な個性を持つ一人ひとりが生きづらさから解放され、豊かな人生を送れるよう、社会のシステムや仕組みを変えたいと考えるようになりました。
直接的な起業のきっかけは、大学時代、就活をしていたトランスジェンダーの先輩が面接時にひどい扱いを受け、就活を諦めたことです。それならば、自分たちでLGBTに理解のある会社を見つけようと、JobRainbowを立ち上げ、2016年1月に法人化しました。就職支援サイトの運営のほか、企業へダイバーシティ研修やeラーニングなどの提供、また企業とのタイアップでLGBT向けのオンラインキャリアアップスクール「PRIDE SCHOOL」も立ち上げました。
――LGBTである人が就職・就労するときには、どのような障壁があるのでしょうか。一般に認識されていないことも少なからずあるように思います。
職場環境の課題は、ハード面とソフト面の両方にあります。LGBTは「性的少数派」としてまとめて扱われがちですが、問題と感じていることはそれぞれのセクシャリティによって異なります。
まず、ハードについては施設面などの課題があります。例えば、男女で異なる制服があること、トイレや更衣室が男女に分かれていて個室がないなど、特にトランスジェンダーにとっては耐え難いことも少なくありません。その結果、そこでの仕事が好きでも、就職を諦めてしまうということも度々あります。
ソフト面については、コミュニケーションやちょっとした言葉といった、心の問題が大きいですね。同性愛に対する「気持ち悪い」という発言やお笑いのネタ的な扱いなど、あからさまな差別的言動だけでなく、ちょっとした雑談――例えばレズビアンに「彼氏は?」と尋ねるなど、些細な言葉や態度が積み重なることでストレスとなることもままあります。また、「黒人なのに頭がいい」「ゲイだから面白くてファッションセンスがある」など一見褒める言葉でも、その裏にある「あなたとは違う」というメッセージや「この属性の人はこう」という決めつけに差別を感じるということもあります。そうしたアンコンシャスバイアス(無意識な偏見)によるマイクロアグレッション(微細攻撃)が積もりに積もって大きなストレスになることが多いのです。
また、組織の対応として、同性パートナーシップなど制度の不備や、LGBTに理解がある相談窓口がないことなども挙げられます。たとえば、性別適合手術を受けたいと思ったときに治療のための有給や費用援助は受けられるのか、またパートナーが病気になったときに異性パートナーと同様の対応をしてもらえるのか。制度や対応がないのはやはり問題だと思います。そもそも日本ではLGBTは個人の趣味嗜好と捉えられがちで、例えば、同性パートナーは単なる同居人とされてしまうような現状になっています。いわば国から普通に受けられるはずの社会サービスを受けられず、企業側もマイナスとなっているものを埋める対応ができていないのです。
スタートをフラットにするためのハード面、ソフト面そして制度面とも、日本の社会や企業では十分に備えられていないというのが実状です。