アトラエは、同社のエンゲージメント解析ツール「wevox(ウィボックス)」のデータを活用し、COVID-19(新型コロナウィルス感染症)の感染拡大が従業員の「働きがい」へ与えた影響について、2019年と2020年に入社した新卒入社1年目の社会人(以下、新卒社員)を対象に比較・分析した。
営業職の新卒社員の場合、4月から9月にかけて例年より極めて大幅にエンゲージメントが低下した。この時期には、リモートワークなどの新しいワークスタイルへの移行によって、オフラインでのコミュニケーションが失われ、営業同行や移動前後の車内によって行われていたフィードバックなどが欠如した。さらに、これらをオンラインで実行するために新たなデジタルツールへ習熟するタスクも課されていた。その結果、人間関係の構築や、仕事内容への理解や習熟に悪影響が生じ、エンゲージメントの急激な低下につながった可能性がある。
一方、9月以降多くのスコアは回復した。これは、デジタルツールの利活用への慣れや、新型コロナウイルスに対する理解が進んだことにより一部オフラインでの仕事やコミュニケーションが再開された結果、十分なコミュニケーションとフィードバックが確保されたことが一因にあると考えられる。
一方、エンジニアの新卒社員の場合は、エンゲージメントの低下は見られず、むしろ向上する項目もあった。これは、入社側・受け入れ側ともにデジタルツールのリテラシーが高く、素早くリモートワークに対応できたことや、エンジニアの研修やOJTはオンラインを利用することによって比較的支障なく実施できたことが背景にあると考えられる。また、2020年のほうが2019年と比較してスコアの差が大きい項目もあった。これは、オフラインでの対面コミュニケーションが苦手な場合においては、むしろリモートワークのほうが心地よく仕事に向き合えたことが背景にあると推察される。
アトラエはこの調査結果を受けて、次のように提言している。
「2020年のCOVID-19の感染拡大を受け、働く環境が一変した結果、新入社員のエンゲージメントは大きな影響を受けたことが分かった。特に、入社時からリモートワークが続いたことにより、部署や部門の垣根を超えた人間関係を十分に築けない人が例年より多い可能性が示唆された。組織の状況に応じて、支援策を提示することが重要であると考えられる。今後も感染拡大が発生する可能性は低くなく、今からの備えも重要である。
特に本調査が示したように、新しいワークスタイルの影響は職種によって大きく異なる。これは、職務内容とリモートワークの相性や、個々人の価値観や性格特性によって生じるものだと考えられる。
よって、人事担当者およびマネージメント層は職務内容や性格特性に応じたきめ細かいフォロー体制を構築しておくことが、2021年入社の新卒社員のエンゲージメントを高く保ち、活き活きと働く環境を用意することにとって非常に重要であると考えられる」