パネリスト
- 江頭春可氏(株式会社ナラティブベース 代表取締役)
- 久保圭太氏(株式会社PR Table Public Relations)
- 櫻井将氏(エール株式会社 代表取締役)
モデレーター
- 日下部奈々氏(ソフトバンク株式会社 SDGs推進室)
企業のエンゲージメントへの関心が急上昇中
近年よく耳にする「エンゲージメント」は、HR分野ではどのような意味を持つのか。ソフトバンク株式会社で人材・組織開発に携わり、現在は同社のSDGs推進を担う日下部奈々氏は、「これまで企業で馴染み深かった『従業員満足度』が『企業に対する社員側からの評価』だったのに対し、『エンゲージメント』は、もともと婚約や約束という意味を持つ言葉であるとおり、『社員と企業・仕事との心的な“相互の絆・つながり”』により重きを置いている」と説明し、「その前提の下、この5年間で組織におけるエンゲージメントがどのように変わってきたのか、議論していきたい」と語った。
リクルートで広告営業などに携わり、2011年に設立した株式会社ナラティブベースで、さまざまなスキルセットを持つ30名以上のメンバーをリモートで束ねる江頭春可氏は、「当社は、企業に対して業務改善やアウトソースを通した業務体制づくりとオンラインチームビルディングのノウハウを提供する『オンラインチームビルディング事業』を、個人に対しては“語り”を通して自身の働き方についての考えを変えていく『ワーククラフティング事業』を展開している。10年間の試行錯誤の中、直近5年間で急速にツールが充実し、コミュニケーションの手法が変わってきたことを実感している。さらに意識の変化が進み、かつては母親であることなどが仕事をする上で心的障壁になっていたが、徐々にプライベートな部分も語りつつ、それを踏まえて仕事をする人が増えてきた」と語った。
株式会社PR Table Public Relationsの久保圭太氏は、人事・広報向けの企業カルチャー発信クラウドサービス「talentbook」の提供を行う同社で、「パブリック・リレーションズ」をテーマに顧客に対する広報・コミュニケーション業務に携わる。前職では2児の父として子連れ出勤や時短勤務も経験し、人事・広報領域に携わるうちにエンゲージメントに興味を持つようになったという久保氏だが、「10年前に1人目が生まれたときには仕事に没頭して、育児にほとんど関わることができなかった」と振り返り、「その反省のもと2人目のときには積極的に子育てに関わったが、自分の働き方だけでなく、取り巻く社会の雰囲気も変わった」と語る。特にここ1年は、コロナ禍によって大企業でもエンゲージメントに直結したコミュニケーション課題を強く意識する傾向にあるという。
続いて、エール株式会社 代表取締役であり、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科で「働く人の幸せ」と「組織の生産性」の両立を研究する櫻井将氏がオンラインで登場。エンゲージメントに不可欠とされる「1on1」について、構造的に利害関係がある上に時間的に余裕がない管理職に代わって、「社外人材によるオンライン1on1」という自社サービスを紹介した。そして、「エンゲージメントは、個人と組織の重なりが増えるほど高まる」と説明し、「これまではその重なりが最初から大きい人を採用するか、組織ビジョン・理念をどう浸透させるかに企業は注目してきた。これからは『セルフアウェアネス』という視点から、自分自身の価値観や無意識バイアスなどに対する解像度を高めることで、エンゲージメントを向上させる必要がある」と語り、そのための取り組みが大企業でも浸透しつつあることを紹介した。