ガートナージャパンは、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に必要となる5つの役割を発表した。
DXに取り組む日本企業が増える中、DXを推進するCIOの多くが、DX人材やデジタル人材の確保に苦心している。同社が2021年7月に開催したウェビナーでは、必要とする人材や育成方法に特に課題がある回答者が多く見られた。ディスティングイッシュト バイス プレジデントでガートナー フェローの足立祐子氏は次のように述べている。
「もともと日本の企業では、経営トップの掛け声とともにDXを推し進める傾向がありました。見切り発車であるため、どのような人材が必要か分からない。必要な人材が分からないため、育成しようとしてもうまくいかない、という悪循環に陥っているといえます。DXを成功させるためには、いったん立ち止まって必要な人材を明らかにし、最適な育成方法を考えなければなりません」(足立氏)
また、同社はCIOやITリーダーがDXを推進する際に、以下の5つの役割が必要であると提言している。
- ビジネス系プロデューサー(ビジネスアーキテクト)
- DXによるビジネスゴールを定義し、新たなビジネスモデルを考えたり、DXに関する企画を考えたりする役割を担う。経営層や社内外の意思決定者とのビジネス面でのコミュニケーションにも責任を持つ。
- テクノロジ系プロデューサー(テクノロジーアーキテクト)
- ビジネスゴールの達成に向けた最適なデジタルテクノロジーの特定やテクノロジーの適用によるシステム面の影響の分析・予測などを担う。経営層や社内外のエコシステムのパートナーに対する技術面のコミュニケーションにも責任を持つ。
- テクノロジスト(エンジニア)
- 現場で実際にテクノロジーを活用する役割を担う。自動化、データサイエンス、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)などの新興領域に注目しがちだが、確実にDXを推進していくためには、通信ネットワーク、IT基盤、セキュリティ、クラウドなどの既存の領域の役割も重要である。テクノロジストもまた、全従業員が対象となる。
- デザイナー
- ソリューション、サービス、アプリケーションのユーザーエクスペリエンス(UX)をデザインする。UX面のコミュニケーション、UXとデザインに関する知識の社内普及に向けた教育なども行う。
- チェンジリーダー
- デジタルテクノロジーの導入に伴う働き方 (業務、意識など)のシフトの主導、変革の目的やゴールの整理、変革のコミュニケーション計画の作成、関係者全員を巻き込んだ意識と行動変容に向けた施策の計画・展開などを担う。
上記の5つの役割について、足立氏は次のように補足している。
「DX推進に必要な5つの役割には、1人が1つの役割を果たす場合と1人が複数の役割を兼任する場合があります。企業によるDXへの注力の仕方やリソースにより違いはありますが、能力だけでなくビジネスとIT双方の経験が必要なため、5つの役割にすべて1人で対応することは現実的に考えにくいシナリオです。1つの役割を1人もしくは2つの役割を1人で担うところから計画を進めることが、地に足の着いたDX人材の育成につながるでしょう」(足立氏)