働きがいとは個人の働きやすさや成長を伴うもの
――一言で「働きがい」といっても、その定義は非常に曖昧です。現代における「働きがい」とはどのようなものか、お二人の考えをお聞かせいただけますか。
荒川陽子氏(以下、荒川) ずっと言い続けていることなのですが、「働きがい」とは「やりがい」と「働きやすさ」の両輪からなるものであり、これらはセットで考えなくてはいけません。一般に働きがいというと、「やりがい」とほぼ同じものと思われがちですが、私たちは、働きやすさも不可欠だと考えています。
当社では先日、「2022年版 日本における『働きがいのある会社』女性ランキング」を出したのですが、ここにランクインしている企業としていない企業で女性管理職のデータを比較すると、働きやすさが重視すべき評価ポイントとされていることが分かりました。
一般の女性社員では、評価要因に「上司の信頼感」や「会社への信用」が挙がりますが(図1)、管理職では自分らしく働けることや柔軟に働けること=働きやすさが加わります(図2)。管理職は業務そのものに加えて、経営との折衝や部下のマネジメントなども担っています。この結果からは、やりがいと働きやすさがセットになってこそ、会社組織により深くコミットできる。それが可能な職場を、管理職の女性たちが「働きがい」があると捉えていることが推測できます。
もちろん、「働きがい」の中心となる評価ポイントはお互いの「信頼」ですが、当社ではここに加えて、変化に対応するイノベーティブなカルチャーや、そうしたカルチャーを作っていくための価値観にはどんなものがあるか、あるいはそこにリーダーシップがどう機能しているかといった、多面的な視点から各社の「働きがい」を評価するように進化してきています。そうした評価の結果、コンカー様は「働きがいのある会社」(中規模部門)で5年連続1位を獲得されたわけです。
三村真宗氏(以下、三村) 私の中で「働きがい」をシンプルに表現すると、2つあります。一つは会社が掲げる夢や目標との一体感、もう一つは社員の一人ひとりが成長を実感できることです。前者については、パーパスやビジョンの大切さをうたう企業は少なくありませんが、どうしても抽象的になりがちです。日々の一つひとつの仕事の積み重ねが、社会貢献につながっていると、社員がリアルな手ごたえを感じられることが原点になるべきです。
その上で大切なのが、後者の成長です。マズローの「欲求5段階説」では、最上位の欲求として「自己実現」を挙げていますが、私たちはこの自己実現の欲求こそ「成長」と言い続けており、会社の夢や目標に一体感を持って働き、その結果として各人が成長を実感できる点を非常に重視しています。
また成長というと、各社が様々な教育プログラムを用意していますが、お仕着せの教育制度を用意しても、なかなか成長しないと思うのです。業務の知識や技術ならともかく、「働きがい」そのものをカリキュラムとして教えることはできません。コンカーではこれを文化レベルまで昇華させた、「高め合う文化」という考え方を掲げています。これは個人の自発的な取り組みに加えて、同僚や上司あるいは部下が刺激しあってお互いのレベルを高め、成長していこうという考え方です。