新卒採用主体から「キャリア総合職採用」に乗り出した理由
一般的に、中途採用といえばスキルを持つ経験者を即戦力として採用する「ジョブ型採用」が主流だ。だが、現在はスキルではなくコンピテンシーや企業のミッション・ビジョン・バリューへの共感度などを軸に「キャリア総合職採用」を取り入れる企業が増えているという。今回登壇した3社は、もともと新卒採用に注力していた会社だ。だが、3社とも現在「キャリア総合職採用」に積極的に乗り出している。モデレーターの河合氏はまず、その背景から尋ねていった。
東京海上日動は、1879年の設立以降、100年以上ほぼ新卒採用だけで事業を行ってきた会社である。しかし近年、新卒採用における競争関係が激化。特に転勤のある「グローバルコース」では毎年200名程度の新卒採用に腐心していた。加えて、組織の構成する社員の年齢樹も課題の一つだ。1990年代前半のバブル期には年間400名程度の新卒採用をしていたが、リーマンショック以降から2012年まで年間100名程度しか新卒採用をしていなかったため、中堅どころの要員確保がネックになっていた。
「3年前(2019年度)から第一線人材として、損害保険業界の一番のメインとなる営業や損害サービスのキャリア採用を始めました。キーワードは多様性。たとえ保険の経験がなくても、これまでの経験で得た知見で新たに開拓していただきたいと思っています。処遇については、昇格を含め新卒社員と平等の位置付けです」(東京海上日動火災保険 人事企画部 人材開発室 次長 採用チームリーダー 山城真氏)
続いて、「ららぽーと」などの商業施設や「東京ミッドタウン」などの複合開発、法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」などを展開する三井不動産も現在、業界未経験のキャリア総合職人材を積極的に採用しているという。その背景は大きく2つ。1つは東京海上日動と同じく、組織のピラミッド構造の穴を埋めるためだ。そしてもう1つが新しい価値観の創出である。
「不動産業界は、今後不動産だけを扱う『ハード産業』だけではますます閉塞的になっていくと思います。つまり、将来のまちづくりには、今までにない新しい価値観を入れていく必要がある。新しい発想で、三井不動産の中でどんどん意見を出してもらいたい。そういう思いから、我々は業界未経験者を積極的に採用しています」(三井不動産 人事部 人材開発グループ 統括 川瀬敦雄氏)
「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンを掲げ、インターネット産業で事業を拡大してきたサイバーエージェント。同社もこれまで新卒採用をメインに推進してきた。もともとサイバーエージェントには、新規事業が次々と生み出される土壌があり、そこで人材の循環も行われていた。だが最近では、1つの事業づくりにかなりの時間を要することが増え、事業のネタがあっても人材が足りないといった事態が起きるようになっていたという。
「これまで新卒採用に注力してきましたが、だんだんと人材の流動も激しくなってきたため、キャリア採用を積極的に取り入れていこうという決断になりました。昨年(2021年)10月から今年6月までの期間で50名ほどがキャリア総合職採用で入社されています」(サイバーエージェント メディア統括本部 経営推進室 メディア人事室 マネージャー 中島さや香氏)