パーソルキャリアは、「リスキリング(学び直し)」に関するビジネスパーソンと企業とのギャップを調査し、その結果を発表した。
同社は、「ビジネスパーソン」と「企業」間の“転職や仕事に対する意識の差”などをはじめとした実情を明らかにする「doda ビジネスパーソンと企業の転職意識ギャップ調査」を継続的に発表しており、今回は4回目となる。
調査の概要は以下のとおり。
<個人向け調査>
- 対象者:全国に住む、転職を検討している、または興味がありリスキリングを知っている20~30代男女会社員(正社員・契約社員)※人事担当を除く
- 集計対象数:200名
- 調査手法:インターネット調査
- 調査期間:2022年12月10日~12月14日
<企業向け調査>
- 対象者:全国に住む、リスキリングを知っている20~60代男女中途採用・人事担当者
- 集計対象数:200名
- 調査手法:インターネット調査
- 調査期間:2022年12月10日~12月14日
調査の結果については、同社は以下のように述べている。
リスキリングに対する企業の実態と今後の動きについて
個人に対してリスキリングに取り組んでいるかを尋ねたところ、取り組んでいる(60.0%)または今後取り組む予定(29.5%)と回答した人が89.5%にも上り、改めてリスキリングへの関心の高まりが分かる結果となった(図2参照)。一方、企業に対して現状の社内でのリスキリング推奨状況を聞いたところ、「取り組んでいる」と回答したのは38.0%にとどまる結果となった(図2・図3参照)。
個人の取り組んでいる(60.0%)の回答内訳を見ると、「現在自発的に個人で取り組んでいる(40.0%)」「現在勤務先の指示/推奨で取り組んでいる(20.0%)」となり、個人の学びたい意向と企業の体制整備にズレがあることがうかがえる。しかし、今後リスキリングを推奨していく予定の企業は約半数(44.5%)に上り、取り組んでいる企業と合算すると8割以上(82.5%)になるため、今後企業の制度整備が整うことでよりリスキリングを行いやすい環境が生まれていくと推測される。
リスキリング実施の目的について
次にリスキリングに取り組んでいる個人と、リスキリングの推奨に取り組んでいる企業それぞれにその理由を尋ねると、最も多かったのはどちらも「スキル向上」という結果になった。2位以下は異なる結果となり、特に個人においては2位が「転職活動を見越した自身の市場価値向上のため」(36.7%)と、リスキリングを、業務効率を上げる方法のみではなく、“転職を優位に進めるための方法”の一つとしても捉えていることが推測できる(図4・図5参照)。
リスキリングにおける課題について
また、同じくリスキリングに取り組んでいる個人と、リスキリング推奨に取り組んでいる企業へ、リスキリングにおける課題を尋ねたところ、「時間の捻出(個人:37.5%、企業:36.8%)」や「モチベーション維持(個人:30.0%、企業:42.1%)」が上位に挙がった。また、個人の1位に挙がった「費用の捻出が難しい(38.3%)」は、企業では5位にとどまり、ギャップがみられた。図2の調査結果から、個人リスキリング実施者の3分の2が自発的に実施している様子がみられ、費用捻出の負担は個人のほうが強く感じていると考えられる。
次いで上位に挙がった「社内制度の未整備(個人:24.2%、企業:30.3%)」や、個人の「自分が取り組むべきことが何か分からない」「スキルを習得する方法が見つからない」(ともに22.5%)という回答からは、リスキリングへの機運は高まっているものの、準備や制度が整っていない状況が推測できる(図6・図7参照)。
転職先選定におけるリスキリング制度の充実と志望度合いの関係
転職活動を行う上で、リスキリング制度の充実具合により、企業への志望度合いがどう変化するかを尋ねたところ、個人では8割以上(81.0%)が「志望度合いが上がる」と回答し、企業も約7割(69.0%)が転職希望者の「志望度合いが上がると思う」と回答している。改めてリスキリングへの関心の高まりが分かるとともに、転職先選定にまで影響を与えていることが見て取れる結果となった(図8参照)。
個人にとって企業のリスキリング制度の充実度は、入社後スキルアップへの適切なサポートを受けられる安心感や、企業の市場変化への対応力として信頼性を示す指標になりえるといえる。
リスキリングで学びたいこと/学ばせたいことについて
最後に個人にはリスキリングで学びたいこと、企業には学ばせたいことを尋ねたところ、個人は「語学関連」(17.5%)が最も多かったのに対し、企業は「思考プロセス」関連(22.5%)と異なる結果になった。
それぞれの内訳を見ると、個人は「語学関連」(17.5%)「思考プロセス関連」(16.5%)、「マネジメントスキル関連」(12.5%)と汎用性の高いビジネス力が並ぶ一方、後続には4・5位に「IT・DX・AI関連」(11.0%)「プログラミング関連」(10.0%)が並び、テクノロジー活用力への関心の高さが表れていた。
企業の回答は「思考プロセス関連」(22.5%)、「マネジメントスキル関連」(18.5%)、「IT・DX・AI関連」(15.0%)と続いた。業種を問わず進んでいるDX化から、これまでになかった新しい仕事が生まれるなど産業構造が大きく変化していることを受けて、価値創造し続けるために必要なスキルが上位に並んだと推察される(図9・図10参照)。
【関連記事】
・DX推進企業の8割がリスキリングにも取り組み、DX推進とリスキリングの関係性が明らかに―帝国データバンク調べ
・日本の経営層は従業員のモチベーション維持とリスキリングを重視、人材への投資意欲が高く―LinkedIn調べ
・リスキリングの経験がある人は3割前後、リスキリング促進には「目標の透明性」が影響―パーソル総合研究所調べ